不織布の見分け方|目付・製法・素材を実物から確認する手順

不織布

手元に不織布だけがあり、「これは何の不織布だろう」と確認したいことがあります。

目付はどのくらいか。どんな製法なのか。PETなのかPPなのか。以前使った製品と同じものなのか。

不織布を見慣れてくると、現物から拾える情報は増えていきます。

ただし、見た目や手触りだけで素材やメーカーまで断定することはできません。

同じ素材でも製法や目付、繊維の太さ、表面加工などによって外観は変わります。逆に、違う素材でも似た見た目になることがあります。

不織布を「当てる」のではなく、現物から分かる情報を一つずつ拾って候補を絞っていく。この記事では、その順番を実際の不織布を見ながら整理します。

最初から素材やメーカーを当てようとしない

出所の分からない不織布を渡されたとき、最初から「これはPETのスパンボンドだ」と決めるのは危険です。

私なら、まず次のように情報を分けて確認します。

順番 確認するもの 分かること
1 寸法と重量 目付
2 厚み シートの嵩高さ
3 全体の外観 均一性、模様、方向性など
4 表面の拡大 繊維、圧着点、絡合状態など
5 光に透かす 目付ムラ、構造、繊維の分布など
6 MD・CD 方向による物性差
7 水や触感 その製品の表面性状や風合い
8 仕様書・分析 素材や製品の確定

現物を見る目的は、まず候補を絞ることです。

① まず目付を測る

最初に数値として取りやすいのが目付です。

目付は、不織布1㎡あたりの質量を表し、一般にg/㎡で表します。

厚みや密度そのものを表す数字ではありません。

例えば同じ120g/㎡でも、これまで実物で比較したPET不織布には、厚み約3mmのニードルパンチと約0.3mmのスパンボンドがありました。

目付が同じでも、製法や構造が変われば厚みは大きく変わります。

小さなサンプルから目付を計算する

縦50mm、横80mmの不織布が0.08gだったとします。

面積は、

0.05m × 0.08m = 0.004㎡

です。

したがって、

0.08g ÷ 0.004㎡ = 20g/㎡

となります。

計算式は、

目付(g/㎡)= 重量(g)÷ 面積(㎡)

です。

ただし、小さな試験片ではわずかな重量差が計算結果へ大きく影響します。可能なら大きめに採取し、数か所を測る方が全体の状態を把握しやすくなります。

② 厚みは目付とは別に確認する

目付を確認したら、次に厚みを見ます。

同じ100g/㎡でも、薄く締まった不織布と、嵩高な不織布ではまったく違う製品に感じます。

厚みを見るときに注意したいのは、柔らかい不織布ほど測定時の圧力で潰れやすいことです。

そのため、正式に製品同士を比較するときは同じ測定条件で比べます。

目付と厚みはセットで見る。

これだけでも不織布の構造を考える材料がかなり増えます。

③ まず全体をそのまま見る

次に、何もせず不織布全体を見ます。

不織布を通常の状態で見た例。まずは全体の色、均一性、表面模様、繊維の向きなどを確認する。

この距離で見る場合、細かな繊維構造までは分かりません。

その代わり、

  • 全体の色
  • 均一性
  • 筋や縞
  • 表面の模様
  • 局所的な薄い部分
  • 汚れや異物

などを確認しやすくなります。

不織布を見るとき、最初から一部分だけを拡大するより、まず全体を見てから気になる場所へ寄っていく方が分かりやすいです。

④ 表面へ寄ると見えてくるものがある

次に、同じ不織布へ近づいて見ます。

同じ不織布の表面を拡大した状態。通常の距離では見えにくかった繊維と規則的な点状パターンが確認できる。

引きの写真では白いシートに見えていましたが、寄ってみると表面に細かな繊維が多数存在することが分かります。

さらに、このサンプルでは規則的に並んだ点状の部分も確認できます。

こうした部分は、不織布をどのように結合しているのかを考える手掛かりになります。

熱圧着タイプの不織布では、ロールによって部分的に繊維を圧着した模様が表面に現れる製品があります。

ただし、模様が見えたから特定メーカーの特定製品だ、とまでは判断しません。

似たパターンの製品も考えられるため、あくまで製法や製品候補を絞る材料として使います。

⑤ 光に透かすと構造がさらに見やすくなる

不織布を見るときに簡単で使いやすい方法が、光に透かすことです。

同じ不織布を光に透かした状態。表面から見た場合より、繊維の分布や圧着部分の違いが確認しやすくなる。

通常の状態では見えにくかった構造が、透過光を使うことでかなり強調されます。

今回のサンプルでも、点状部分とその周囲で光の通り方が違うことが分かります。

また、繊維が多く集まっている部分と少ない部分も見つけやすくなります。

私は不織布を確認するとき、表面だけで分からなければ一度光にかざして見ることがあります。

特別な装置がなくてもできる確認方法です。

光に透かしたときに見るもの

見る場所 確認できること
明るく透ける部分 繊維量が少ない部分や構造差の可能性
暗く見える部分 繊維が集まっている部分など
規則的な模様 圧着や製造構造の手掛かり
筋状のムラ ウェブ形成や方向性の手掛かり
孔・欠点 局所的な異常の確認

ただし、光に透かしてムラが見えたからといって、それだけで不良とは判断しません。

軽量不織布などでは構造そのものが見えやすい場合があります。正常品や規格と比較して判断します。

3つの見方を並べると分かりやすい

今回使用したのは、すべて同じ不織布です。

見方 主に分かること
引き 全体の均一性、色、筋、模様
寄り 繊維、表面状態、圧着・絡合など
透かし 繊維分布、目付ムラ、構造、模様

1枚目だけを見ていたときより、3枚目まで見ると得られる情報はかなり増えています。

同じ不織布でも、見る方法を変えるだけで見えるものが変わる。

不織布を見分けるときには、この考え方が役立ちます。

表面から製法の候補を考える

ここからは、表面の特徴と一般的な製法を照らし合わせます。

ただし、目的はあくまで候補を絞ることです。

スパンボンド

スパンボンドは、樹脂から紡糸した連続した繊維をウェブ化する製法です。

熱圧着タイプでは、表面に規則的な圧着模様が見える製品があります。

薄手でもシートとしてまとまり、表面から細い連続繊維が確認できる製品もあります。

ただし、スパンボンドでも製品仕様は一つではありません。

見た目だけで「スパンボンドなら必ずこの模様」と判断することはできません。

ニードルパンチ

ニードルパンチは、多数の針をウェブへ突き刺して繊維同士を絡ませる製法です。

比較的厚みがあり、表面に繊維感が残る製品も多くあります。

スパンボンドの熱圧着品と並べると、表面状態や厚みの違いが分かりやすい場合があります。

ただし、ニードルパンチも使用する繊維や目付、後加工によって外観は変わります。

スパンレース

スパンレースは、高圧の水流で繊維を絡ませる製法です。

ワイパーや衛生材料などに使われる製品があり、比較的柔らかな風合いを持つものもあります。

水流や搬送ネットなどに由来する表面パターンが見える製品もあります。

これも模様だけで断定せず、他の特徴と組み合わせて判断します。

メルトブロー

メルトブローは、溶融した樹脂を高速の熱風によって細く引き伸ばしながら繊維化する製法です。

非常に細い繊維を形成できることが特徴です。

フィルター用途などで使用されます。

ただしSMSなどの積層不織布では、表面がスパンボンド層になっているため、表面だけを見ても内部のメルトブロー層を確認できない場合があります。

長繊維・短繊維も候補を絞る材料になる

繊維そのものを見ることも参考になります。

スパンボンドは連続した長繊維を使用する代表的な不織布です。

一方、一般的なニードルパンチやスパンレースには短繊維を使う製品があります。

ただし、肉眼だけで繊維長を正確に判断できるとは限りません。

製法や目付によっては表面からほとんど分からない場合もあります。

長繊維と短繊維については、別記事でPETスパンボンドとPETニードルパンチの実物を使って比較しています。

MD・CDも確認する

不織布には、製造時の機械方向であるMDと、それに直交するCDがあります。

ロール品なら、基本的にロールから引き出す方向がMD、幅方向がCDです。

カットされたサンプルでは分かりにくくなりますが、方向によって伸び方や破断状態が違う製品があります。

実際にPP30g/㎡のスパンボンドをMD・CD方向へ手で引っ張ったところ、使用したサンプルでは明確な違いが確認できました。

MD・CDについては別記事で実物写真を使って比較しています。

水を使って素材を断定しない

不織布へ水を落とす確認方法もあります。

ただし、「水を弾いたからPP」「浸透したからPET」と素材判定に使うのは避けます。

同じPPでも親水処理された製品がありますし、PETでも製法や表面加工などによって水滴の挙動は変わります。

水を落として分かるのは、まず

「この不織布が現在、水に対してどのような挙動をするか」

です。

水を吸わせたい用途なのか、水を弾きたい用途なのかを見るには有効ですが、樹脂種を確定する試験ではありません。

PETかPPかを見た目だけで確定するのは難しい

PETとPPは不織布でよく使われます。

しかし、白いシートを見ただけで確実に判別することはできません。

同じ素材でも製法や繊維の太さ、目付が変われば外観は変わります。

素材を確定する必要がある場合は、仕様書や仕入履歴、メーカー情報を確認します。

それでも分からず、樹脂種を確実に確認する必要がある場合には、FT-IRなどの分析を利用する方法もあります。

エンボスだけでメーカーを決めない

表面の模様は非常に分かりやすい特徴です。

既知サンプルと同じパターンであれば、候補を絞る材料になります。

ただし、「この模様だから○○メーカー」と、それだけで判断することはできません。

似たパターンを使用する製品も考えられます。

また、見たことのない模様だから海外製という判断にも根拠はありません。

エンボスは有力な手掛かりではありますが、他の規格や製造情報と合わせて使います。

手で触った情報も捨てない

現物を見るとき、数値だけでは分からない情報もあります。

例えば、

  • 硬いか柔らかいか
  • 嵩高いか薄いか
  • 表面が滑らかか
  • 毛羽があるか
  • 曲げたときに戻るか
  • 方向によって伸び方が違うか

などです。

これらを一つだけ見て製法を断定することはできませんが、目付や厚み、表面構造と組み合わせると有力な比較材料になります。

この順番で見てみる

出所の分からない不織布を渡された場合、私はおおよそ次の順番で確認します。

順番 確認内容
1 縦・横寸法と重量から目付を確認
2 厚みを確認
3 引いた状態で全体を見る
4 表面へ寄って繊維・模様を見る
5 光に透かす
6 裏面や断面も確認する
7 繊維構造から製法候補を考える
8 MD・CDなど方向性を見る
9 水に対する挙動や触感を見る
10 既知品・規格表・仕入履歴と照合する
11 必要ならメーカー確認や分析を行う

一つの特徴だけで結論を出さないことが重要です。

現物から分かることと、分からないこと

比較的確認しやすい 現物だけでは断定しにくい
目付 正確な素材
厚み メーカー
製品グレード
表面状態 正確な繊度
水に対する挙動 添加剤
方向性 詳しい製造条件

分からないものを無理に断定しないことも、不織布を見分ける技術の一つだと思います。

比較用の実物サンプルを持っておくと早い

実物を見分けるうえで一番役立つのは、仕様が分かっている不織布を手元に残しておくことです。

例えば、PPスパンボンド、PETスパンボンド、PETニードルパンチ、スパンレースなど、製法と仕様が分かるものを少量ずつ保管します。

新しいサンプルが来たら、既知品と並べます。

写真だけで比較するより、厚み、硬さ、繊維感、光の透け方まで直接比べられます。

不織布は写真では差が伝わりにくい製品なので、実物サンプルを残しておく意味は大きいです。

まとめ

不織布は、現物を一目見ただけで素材や製品名まで確定できるものではありません。

まず目付と厚みを確認し、全体を見る。次に表面へ寄る。そして光に透かす。

今回の実物写真でも、同じ不織布なのに「引き」「寄り」「透かし」で見える情報がかなり変わりました。

そのうえで繊維、表面模様、MD・CD、水に対する挙動などを確認し、候補を少しずつ絞ります。

不織布を見分けるとは、見た目だけで正解を当てることではなく、現物から拾える情報を増やしていくことです。

最終的に正確な素材や製品を特定する必要がある場合は、仕様書、メーカー情報、必要に応じて分析結果まで確認します。

参考資料

※本記事の現物確認方法は、不織布の候補や特徴を把握するための簡易的な方法です。素材、メーカー、製品グレードなどを保証する判定方法ではありません。

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