スパンボンド不織布とは?製法・素材・特徴・用途を実務目線で解説

スパンボンド

スパンボンド不織布は、衛生材料、農業資材、建築資材、フィルター、自動車部材など、幅広い分野で使われている不織布です。

見た目だけでは一般的な不織布と区別しにくい場合がありますが、製造方法には大きな特徴があります。

スパンボンドは、樹脂から連続したフィラメントを直接形成し、そのままウェブ化して不織布にする製法です。

短繊維をあらかじめ準備してカードなどでウェブを作る製法とは異なり、紡糸からウェブ形成までを連続して行います。

この記事では、スパンボンド不織布の基本構造、製造工程、使用される素材、物性を見るときのポイント、代表用途まで整理します。

スパンボンド不織布とは

スパンボンドは、一般に「紡糸直結型の長繊維不織布」として整理されます。

樹脂を溶融して紡糸し、連続したフィラメントを形成しながらウェブ状に堆積させ、その後に繊維同士を結合してシート化します。

ユニチカの技術史でも、スパンボンドは樹脂ペレットを溶融紡糸し、連続フィラメントのままシート状に開繊・堆積し、その後に熱圧着などを行って不織布にする一貫生産方式として説明されています。

ポイントは、

樹脂 → 紡糸 → 延伸 → ウェブ形成 → 結合 → 巻取り

までが連続したラインとして構成されることです。

短繊維不織布との違い

スパンボンドを理解するときは、カード法などを使う短繊維不織布と比較すると分かりやすくなります。

項目 スパンボンド 短繊維系不織布の例
主な繊維形態 連続フィラメント ステープルファイバー
ウェブ形成 紡糸工程から直接形成 カード、エアレイドなど
工程 紡糸からウェブ形成まで連続 繊維を準備した後にウェブ形成
結合 熱接着など ニードル、熱、水流、樹脂など

ただし、「長繊維だから必ず強い」「短繊維だから必ず弱い」とは言えません。

実際の強度は、原料、繊維径、目付、繊維配向、結合条件、厚みなどによって変わります。

スパンボンドができるまで

スパンボンドの製造工程はメーカーや設備によって異なりますが、大きく分けると次の流れで考えることができます。

工程 内容
原料供給 ポリマー樹脂を供給する
溶融 樹脂を加熱して溶融する
紡糸 ノズルから押し出してフィラメントを形成する
延伸 フィラメントを細化・配向させる
ウェブ形成 フィラメントを移動ベルト上などに堆積させる
結合 熱などで繊維同士を結合する
巻取り 完成した不織布をロール状に巻き取る

日本不織布協会の「不織布の基礎知識」でも、スパンボンド方式を「原料」「ウェブ形成」「繊維間接着」などに分けて整理しています。

① 原料を溶融する

スパンボンドでは、熱可塑性ポリマーが広く使われています。

代表的なものとして、

  • ポリプロピレン(PP)
  • ポリエステル(PET)
  • ポリエチレン系
  • 複合繊維

などがあります。

また、PLAなどの生分解性・植物由来系ポリマーを使用したスパンボンドも存在します。

日本不織布協会の製品データベースにもPLAスパンボンド不織布の製品例があります。

② 紡糸して連続フィラメントを作る

溶融したポリマーを紡糸口金から押し出し、細いフィラメントを形成します。

スパンボンドの大きな特徴は、この繊維が基本的に連続フィラメントであることです。

短く切断した繊維を後工程で並べるのではなく、紡糸した繊維をそのままウェブ形成工程へ送ります。

③ 延伸して繊維を細くする

形成されたフィラメントは、空気流などを利用して延伸されます。

この工程では、フィラメントの繊維径だけでなく、分子配向や機械的性質にも影響が出ます。

ただし、最終製品の強度や風合いは延伸工程だけで決まるものではありません。

原料、紡糸条件、繊維径、ウェブ配向、結合条件など複数の要素が影響します。

④ ウェブを形成する

延伸されたフィラメントを移動ベルト上などへ堆積させ、ウェブを形成します。

ここでは、繊維がどの方向にどの程度配向するかが重要です。

実際のスパンボンドでは、MD方向とCD方向で引張強さや伸びに差が出る場合があります。

ただし、「必ずMDが強い」と一律に決めることはできません。

設備、繊維の堆積状態、ウェブ形成条件などによって物性バランスは変わります。

⑤ 繊維同士を結合する

ウェブ形成後、繊維同士を結合してシートとしての強度を与えます。

PPスパンボンドなどでは、エンボスロールによる熱圧着が広く使われています。

一方で、スパンボンド全体を「必ずエンボスロールで接着する製法」と定義するのは正確ではありません。

設備や製品設計によって結合方法は異なります。

熱接着の場合でも、

  • 接着面積
  • エンボスパターン
  • 温度
  • 圧力
  • 速度

などによって、強度、風合い、嵩、表面状態が変わります。

エンボスを見るとスパンボンドらしさが分かる場合がある

熱エンボスで結合されたスパンボンドでは、表面に規則的な点状・模様状の接着部が見えることがあります。

拡大すると、繊維が密集して溶着している部分と、比較的自由な繊維部分を確認できる場合があります。

ただし、表面のエンボスだけでスパンボンドと断定することはできません。

不織布の見分け方については別記事で詳しく整理しています。

スパンボンドに使われる代表的な素材

素材 特徴を見るときのポイント 用途例
PP 軽量、熱接着性、耐薬品性など 衛生材料、包装、農業資材など
PET 耐熱性、寸法安定性、強度など 産業資材、建築、フィルターなど
PE系・複合 低温接着性、柔軟性など 衛生材料、生活資材など
PLAなど 原料由来や分解条件など 農業、生活資材など

実際の製品性能は素材だけでは決まりません。

同じPPスパンボンドでも、繊維径、目付、エンボス、添加剤、後加工などによって別の製品になります。

PPスパンボンド

PPはスパンボンドで広く使われる代表的な原料です。

衛生材料、包装、農業・園芸、生活資材など幅広い用途があります。

PPは密度が比較的小さく、熱接着しやすいため、高速で連続生産するスパンボンドとの相性が良い材料の一つです。

ただし、「PPだから安い」とだけ考えるのは不十分です。

製品価格は目付、幅、数量、加工、着色、特殊機能などによって大きく変わります。

PETスパンボンド

PETスパンボンドは、産業資材分野でも広く使われています。

東レはPET長繊維不織布を展開しており、各種産業用途へ供給しています。

ユニチカも長年にわたりPETスパンボンドを展開してきました。

PETはPPと比較すると耐熱性や寸法安定性を必要とする用途で選択される場合があります。

ただし、実際の使用温度や性能は製品規格ごとに確認する必要があります。

スパンボンドの特徴

スパンボンドには、製法上いくつかの特徴があります。

  • 連続フィラメントから構成される
  • 紡糸からウェブ形成まで連続生産できる
  • 薄物から中目付の製品を大量生産しやすい
  • 素材や結合条件によって多様な物性設計ができる
  • 広幅ロール製品を生産しやすい

ただし、これらは一般的な製法上の特徴であり、個々の製品の性能を保証するものではありません。

「スパンボンドは強い」はどこまで正しいか

スパンボンドは連続フィラメントを使用するため、短繊維系不織布と比べて高い引張性能を持つ製品も多くあります。

しかし、「スパンボンドは短繊維不織布より必ず強い」とは言えません。

例えば強度には、

  • 原料
  • 繊維径
  • 目付
  • 繊維配向
  • 結合面積
  • 結合条件
  • MD/CD方向

などが関係します。

したがって、強度比較をするときは同じ試験条件・同じ方向で実測値を見る必要があります。

スパンボンドは薄いのか

スパンボンドは比較的薄いシートを生産しやすい製法ですが、製品の目付や厚みには非常に幅があります。

そのため、「スパンボンドは15〜130g/㎡」「厚みは0.1〜2mm」のように製法全体を一つの範囲で定義するのは避けた方がいいです。

メーカー、設備、素材、製品用途によって製造可能範囲は異なります。

厚みが必要な場合も、単純に目付を増やすだけではなく、繊維径や嵩、結合条件などが関係します。

同じPET100%・同じ目付でも全く違う

このサイトで比較しているPET100%・120g/㎡の不織布では、ニードルパンチとスパンボンドで大きな厚み差があります。

一例では、

不織布 素材 目付 厚み
ニードルパンチ PET100% 120g/㎡ 約3mm
スパンボンド PET100% 120g/㎡ 約0.3mm

同じ素材、同じ目付でも厚みは約10倍違います。

これはスパンボンドとニードルパンチで、繊維の状態、ウェブ形成、結合方法、密度などが異なるためです。

不織布は素材名と目付だけでは判断できないことが分かりやすい例です。

スパンボンドとニードルパンチの違い

項目 スパンボンド ニードルパンチ
主な繊維形態 連続フィラメント 短繊維が多いが製品により異なる
ウェブ形成 紡糸から直接形成 カードなどで形成することが多い
結合 熱接着など 針による機械的絡合
厚み 比較的薄い製品を作りやすい 嵩高・厚物を作りやすい
用途 衛生、農業、建築、産業など 自動車、土木、フィルター、吸音など

どちらが優れているかではなく、必要な構造や性能によって選びます。

スパンボンドとメルトブローの違い

スパンボンドとメルトブローは、どちらもポリマーから直接繊維を形成する不織布ですが、繊維形成方法や得られる繊維径が異なります。

項目 スパンボンド メルトブロー
繊維 連続フィラメント 非常に細い繊維を形成しやすい
特徴 強度・支持層として使いやすい 微細繊維層を作りやすい
用途例 基材、表面材、農業資材など フィルター、ろ材など

SMSとは

スパンボンドとメルトブローを組み合わせた代表的な複合不織布がSMSです。

S=Spunbond
M=Meltblown
S=Spunbond

外側のスパンボンド層によって強度や加工性を確保し、中央のメルトブロー層によって微細繊維構造を付加します。

衛生・医療用途などで利用されています。

スパンボンドの主な用途

分野 用途例
衛生 紙おむつ、生理用品、マスク部材など
農業 べたがけ、被覆、育苗関連など
建築・土木 防水関連基材、保護材、分離材など
自動車 内装、フィルター基材、補強材など
生活 包装、収納、各種資材など
フィルター 支持体、複合ろ材の基材など

実際には同じ用途でも、PP・PETなど素材の違いや、目付、繊維径、後加工によって製品設計は変わります。

スパンボンドを見るときに確認したい項目

スパンボンドを比較・選定するときは、「スパンボンド」という製法名だけでは不十分です。

確認項目 見るポイント
素材 PP、PET、PE系、複合など
目付 g/㎡
厚み 実測値・測定条件
繊維径 dtex、デニールなど
MD/CD 方向別の強度・伸び
結合 エンボス、熱接着条件など
表面 エンボス、均一性、毛羽など
後加工 親水、撥水、帯電、ラミネートなど

特に同じ目付の製品を比較するときは、厚み、繊維径、MD/CD物性まで見ると違いが分かりやすくなります。

まとめ

スパンボンド不織布は、ポリマーから連続フィラメントを形成し、そのままウェブ化して不織布にする紡糸直結型の製法です。

紡糸からウェブ形成までを連続して行えることが、短繊維系不織布との大きな違いです。

一方で、スパンボンドという製法名だけでは、強度、厚み、風合い、価格などは決まりません。

実際には、

原料 → 紡糸 → 延伸 → ウェブ形成 → 結合 → 目付・厚み → 後加工

まで見る必要があります。

同じ素材、同じ目付でも製法や設計が違えばまったく別の不織布になります。

スパンボンドを理解するときは、「長繊維不織布」という言葉だけではなく、製造工程と最終的な規格を合わせて見ることが重要です。

参考資料

※スパンボンド不織布の強度、伸び、厚み、通気性、耐熱性、価格などは、製法名だけでは決まりません。原料、繊維径、目付、繊維配向、結合条件、後加工、製品規格などによって異なります。

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