不織布の種類不織布の種類とは?主要な製法・結合方法・用途を体系整理

不織布

不織布には、スパンボンド、ニードルパンチ、スパンレース、湿式、メルトブローなど多くの製法があります。

しかし、これらを単純に横並びで覚えると、少し分かりにくくなります。

不織布の製造では、大きく見ると、

① 繊維をどのようにシート状へ並べるか(ウェブ形成)

② その繊維をどのように結合・絡合させるか

という2つの工程があります。

例えば「カード」はウェブを作る方法であり、「ニードルパンチ」はそのウェブを針で絡ませる方法です。

一方、スパンボンドのように、樹脂から繊維を作りながら直接ウェブを形成する製法もあります。

この記事では、不織布の種類を「ウェブ形成」と「結合方法」に分けて整理し、代表的な企業事例や用途まで紹介します。

不織布とは

不織布は、繊維を織ったり編んだりせず、繊維をシート状に形成し、機械的・熱的・化学的な方法などによって結合または絡合して作る材料です。

織物や編物との最も大きな違いは、糸を規則的に交差させたり、ループを連続させたりして面を作るのではなく、繊維集合体からシートを形成する点にあります。

ただし、「不織布」という名称だけでは、実際の構造や性能までは分かりません。

同じPET100%の不織布でも、スパンボンドとニードルパンチでは厚み、表面状態、密度、強度、風合いなどが大きく異なります。

不織布は「ウェブ形成」と「結合方法」に分けると分かりやすい

不織布を理解するときに重要なのが、ウェブ形成と結合方法を分けて考えることです。

工程 意味 代表例
ウェブ形成 繊維をシート状に並べる カード、エアレイド、湿式、スパンボンド、メルトブローなど
結合・絡合 形成した繊維集合体に強度や形状安定性を与える ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレースなど

日本不織布協会の「不織布の基礎知識」でも、製造方法を「ウェブの形成」と「繊維間接着/結合」に分けて整理しています。

ウェブ形成方法の主な種類

まず、繊維をどのようにシート状へ並べるかを見ていきます。

代表的なウェブ形成方法には、

  • 乾式
  • エアレイド
  • 湿式
  • スパンボンド
  • メルトブロー
  • フラッシュ紡糸

などがあります。

乾式法

乾式法では、主に短繊維を空気中で開繊・配列してウェブを形成します。

代表的な方法の一つがカード法です。

カード法

カード法では、短繊維をカード機で開繊し、繊維をウェブ状にします。

繊維が機械方向に配向しやすいため、MD方向とCD方向で物性差が生じることがあります。

作られたウェブは、その後、

  • ニードルパンチ
  • スパンレース
  • サーマルボンド
  • ケミカルボンド

などによって結合されます。

つまり、カード=完成した不織布の結合方法ではなく、主にウェブを形成する工程です。

エアレイド

エアレイドは、空気流を利用して繊維を分散・堆積させ、ウェブを形成する方法です。

カード法とは繊維の並び方やウェブ形成方法が異なり、比較的ランダムな繊維配向を作ることができます。

パルプなどを使用した吸収性材料にも利用されています。

日本不織布協会でも、エアレイドをウェブ形成方法の一つとして独立して整理しています。

湿式法

湿式法では、繊維を水中に分散させ、その繊維分散液から水を除きながらシートを形成します。

紙の抄造と似た考え方ですが、使用する原料や製品設計は不織布として多様です。

湿式法は、薄く均一なウェブを形成しやすい特徴があります。

廣瀬製紙では、水中に繊維を分散して抄造する湿式法を用いて、PET、ポリオレフィン、PPSなどさまざまな繊維の不織布を製造しています。

同社では、ポリオレフィンで2g/㎡、PETで3g/㎡といった非常に低い坪量の湿式不織布も製造しています。

ただし、製造可能な目付や厚みは原料や設備、製品設計によって異なります。

スパンボンド

スパンボンドは、ポリマーから連続繊維を紡糸し、その繊維を直接ウェブとして形成する製法です。

短繊維をあらかじめ準備してウェブを作る乾式法とは工程の考え方が異なります。

代表的な原料には、

  • ポリプロピレン(PP)
  • ポリエステル(PET)
  • ポリエチレン系

などがあります。

東レではPET長繊維不織布「アクスター®」やPPスパンボンド「リブセン®」などを展開しています。

旭化成も「エルタス®」を中心にスパンボンド不織布を製造しており、紙おむつなどの衛生材料、自動車、家庭用品などへ展開しています。

スパンボンドについては別記事で詳しく整理しています。

メルトブロー

メルトブローは、溶融したポリマーを紡糸し、高速の熱風によって細い繊維へ引き伸ばしながらウェブを形成する方法です。

一般にスパンボンドより細い繊維を形成しやすく、微細な繊維集合体を作ることができます。

そのため、

  • エアフィルター
  • 液体フィルター
  • マスク用ろ材
  • 吸油材

などに使用されます。

ただし、ろ過性能は繊維径だけで決まるものではありません。

目付、厚み、空隙構造、帯電処理なども関係します。

フラッシュ紡糸

フラッシュ紡糸では、ポリマー溶液を高圧状態から急激に膨張させることで、微細な繊維状構造を形成します。

代表例としてDuPontのTyvek®があります。

Tyvek®は高密度ポリエチレンを原料としたフラッシュスパン材料で、防護服、包装、建築用途などに使用されています。

次に「繊維をどう結合するか」を見る

ウェブを形成しただけでは、繊維同士の結合が弱く、製品として必要な強度を得られない場合があります。

そこで、ウェブ形成後に繊維を結合・絡合させます。

代表的な方法は、

  • ケミカルボンド
  • サーマルボンド
  • ニードルパンチ
  • スパンレース
  • ステッチボンド

です。

ケミカルボンド

ケミカルボンドは、バインダーなどの接着剤を使って繊維同士を結合する方法です。

バインダーの種類、付着量、付与方法などによって、強度、風合い、耐水性などが変わります。

そのため、「ケミカルボンド」という名称だけでは最終的な物性を判断できません。

サーマルボンド

サーマルボンドは、熱によって熱可塑性繊維や低融点成分を溶融・軟化させ、繊維同士を接着する方法です。

代表的な方法には、熱ロールによるエンボス接着や、熱風による接着などがあります。

PPスパンボンドなどでは、エンボスロールによる熱圧着が広く用いられています。

ただし、すべてのスパンボンドが同じ結合方式で作られるわけではありません。

ニードルパンチ

ニードルパンチは、バーブと呼ばれる突起を持つ針をウェブへ繰り返し刺し込み、繊維を厚み方向へ移動・絡合させる方法です。

比較的厚みのある不織布を作ることができ、自動車、土木、フィルター、カーペットなど幅広い用途があります。

ニードルパンチについては別記事で詳しく整理しています。

スパンレース

スパンレースは、高圧水流をウェブへ当て、繊維同士を絡ませる方法です。

「水流交絡法」とも呼ばれます。

接着剤を主な結合手段として使わずに繊維を絡合させることができ、ワイパー、衛生材料、化粧用シート、医療材料などに利用されています。

重要なのは、スパンレース=ウェブ形成方法ではなく、主に繊維を絡合させる方法だという点です。

ステッチボンド

ステッチボンドは、ウェブなどを糸で縫うように結合する方法です。

機械的に繊維集合体を固定でき、用途や設計によってさまざまな構造を作ることができます。

「カード不織布」「ニードルパンチ不織布」は分類軸が違う

不織布の名称が分かりにくい理由の一つは、異なる工程の名称が製品名として使われることです。

例えば、

名称 主に表しているもの
カード ウェブ形成方法
エアレイド ウェブ形成方法
湿式 ウェブ形成方法
スパンボンド 紡糸からウェブ形成までを連続して行う製法
ニードルパンチ 結合・絡合方法
スパンレース 結合・絡合方法
サーマルボンド 結合方法

となります。

そのため実際には、

カードでウェブ形成 → ニードルパンチで絡合

という組み合わせもあれば、

カードでウェブ形成 → スパンレースで絡合

という組み合わせもあります。

不織布を正確に理解するには、一つの名称だけでなく、工程全体を見る必要があります。

スパンボンドとメルトブローを組み合わせたSMS

不織布では、異なる構造を積層した複合材料も多くあります。

代表例がSMSです。

Spunbond / Meltblown / Spunbond

の3層構造を組み合わせます。

役割の例
外側のスパンボンド 強度、耐摩耗性、形状保持
中央のメルトブロー 微細繊維層によるバリア・ろ過機能
外側のスパンボンド 保護、強度、加工性

衛生材料や医療・防護分野などで利用されています。

ただし、実際の性能は層数、目付、繊維径、原料、後加工などによって変わります。

企業事例で見る不織布

企業 製法・製品例 特徴・用途例
東レ PET長繊維不織布、PPスパンボンドなど 産業資材、衛生材料など
旭化成 エルタス®などのスパンボンド不織布 衛生材料、自動車、家庭用品など
廣瀬製紙 湿式不織布 フィルター、電池関連、各種産業資材など
DuPont Tyvek® 防護服、包装、建築用途など

同じ「不織布メーカー」でも、得意とする製法や原料、用途は大きく異なります。

不織布を選ぶときは製法名だけで判断しない

「スパンボンドだから強い」「ニードルパンチだから厚い」「湿式だから薄い」と単純に判断するのは危険です。

実際の製品を選ぶときは、

  • 原料
  • 繊維長
  • 繊維径
  • ウェブ形成方法
  • 繊維配向
  • 結合方法
  • 目付
  • 厚み
  • 後加工

などを確認します。

例えば同じPET100%・同じ120g/㎡でも、スパンボンドとニードルパンチではまったく異なる製品になります。

不織布の種類を整理すると

分類軸 主な種類
ウェブ形成 カード、エアレイド、湿式、スパンボンド、メルトブロー、フラッシュ紡糸など
結合・絡合 ケミカルボンド、サーマルボンド、ニードルパンチ、スパンレース、ステッチボンドなど
複合 SMSなど

この2軸で考えると、不織布の名称がかなり整理しやすくなります。

まとめ

不織布には多くの種類がありますが、まず「ウェブ形成」と「繊維の結合・絡合」を分けて考えることが重要です。

カード、エアレイド、湿式などは主にウェブ形成方法です。

ニードルパンチ、スパンレース、サーマルボンド、ケミカルボンドなどは、主に繊維を結合・絡合する方法です。

スパンボンドやメルトブローのように、紡糸からウェブ形成までを連続して行う製法もあります。

したがって、不織布を見るときは、

原料 → 繊維 → ウェブ形成 → 結合方法 → 目付・厚み → 後加工 → 最終用途

という順番で考えると分かりやすくなります。

不織布の製法名は、単なる名前ではなく、その製品がどのような構造になっているかを理解するための入口です。

参考資料

※不織布の強度、厚み、均一性、通気性、ろ過性能などは、製法名だけで決まるものではありません。原料、繊維径、繊維長、配向、目付、結合条件、後加工などによって異なります。

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