生分解性不織布とは|PLA・分解条件・実際の製品例

不織布

「生分解性不織布」と聞くと、土に置いておけば自然に消えていく不織布を想像するかもしれません。

実際には、それほど単純ではありません。

生分解性は、材料だけでなく、温度、水分、微生物、場所、時間などの条件によって大きく変わります。

また、「植物由来」「バイオマス」「生分解性」は同じ意味ではありません。

生分解性不織布を考えるときは、何から作られているのか、どの環境で分解するのか、使用中に必要な性能を維持できるのかまで確認する必要があります。

生分解性不織布とは

生分解性とは、材料が微生物の働きによって分解される性質を指します。

好気的な環境では、分解が進むことで最終的に二酸化炭素や水などになります。

ただし、「生分解性がある」というだけでは、どこでも同じ速度で分解することを意味しません。

例えば、工業用コンポスト、家庭用コンポスト、土壌、淡水、海洋では環境条件がまったく違います。

確認したいこと 理由
分解する環境 コンポスト、土壌、海洋などで分解性が異なるため
温度 温度によって微生物活動や材料の加水分解速度が変わるため
水分 分解反応や微生物活動に影響するため
時間 「生分解する」と「短期間で消える」は同じではないため
製品構成 樹脂、添加剤、接着剤などがすべて同じ分解性とは限らないため

生分解性不織布を見るときに重要なのは、「生分解するか」だけではなく、どの条件で生分解するのかです。

「バイオマス」と「生分解性」は別の話

ここは混同されやすいところです。

バイオマスプラスチックは、植物など再生可能な有機資源を原料として利用することに着目した分類です。

一方、生分解性プラスチックは、微生物によって分解される性質に着目した分類です。

そのため、植物由来だから必ず生分解するわけではありません。

逆に、石油由来でも生分解性を持つ樹脂があります。

代表例がPBATです。PBATは一般に石油化学原料から製造されますが、生分解性を持つポリエステルです。

つまり、環境対応素材を見るときは、

「何から作ったか」と「使用後にどう分解するか」は分けて考える

必要があります。

PLAとは

生分解性不織布でよく名前を見る材料の一つが、PLA(ポリ乳酸)です。

PLAは、植物由来の糖などから作られる乳酸を原料とするポリエステルです。

植物由来原料を使用できるためバイオマス材料であり、適切な条件では生分解性も持ちます。

不織布だけでなく、樹脂成形品、フィルム、繊維などにも使用されています。

PLAだから屋外ですぐ分解するわけではない

PLAについて特に注意したいのがここです。

「生分解性」と表示されていても、一般的な使用環境で急速に分解するわけではありません。

実際には、水分、温度、微生物などの条件によって分解速度が大きく変わります。

これは製品としては必要な性質でもあります。

使用中から簡単に崩れてしまえば、不織布として十分な機能を維持できないからです。

保管中や使用中には必要な性能を持ち、廃棄後に適切な環境へ入ったときに分解が進む。このバランスが生分解性材料では重要になります。

PBATとは

PBAT(ポリブチレンアジペートテレフタレート)も、生分解性材料として使われるポリエステルの一つです。

PLAとの大きな違いの一つが柔軟性です。

PLAは比較的硬く、用途によっては脆さが問題になります。一方、PBATは柔軟性や靭性を持つため、PLAなどと組み合わせて使用される場合があります。

ただしPBATは、一般的には石油由来原料から作られます。

この点からも、「生分解性=植物由来」ではないことが分かります。

不織布になると、材料だけでは性能が決まらない

PLAやPBATという原料名が分かっても、それだけで不織布の性能は決まりません。

通常のPETやPP不織布と同じように、不織布の性能は製法や仕様によって変わります。

項目 製品に影響すること
目付 重量、強度、遮蔽性など
厚み 嵩高さ、クッション性など
繊度 風合い、表面状態、強度など
繊維長 シート形成や強度など
製法 強度、柔軟性、厚み、方向性など
二次加工 撥水、親水、接着、補強など

そのため、「PLA100%不織布」という情報だけで用途を決めることはできません。

生分解性と不織布の製法は別に考える

生分解性は主に材料側の性質です。

一方、スパンボンド、スパンレース、ニードルパンチなどは、不織布をどのように作るかという製法の話です。

この2つは分けて考えた方が分かりやすくなります。

スパンボンド

溶融した樹脂から連続した繊維を作り、そのままシート化する製法です。

PLAを使用したスパンボンド不織布は実際に製品化されています。

長繊維から構成されるため、資材用途など強度が必要な分野にも展開されています。

短繊維を使った不織布

PLAを短繊維として使用し、スパンレースやその他の方法でシート化することもできます。

この場合も、「PLAだからこの風合いになる」というわけではありません。

繊維の太さや長さ、混率、絡合方法などによって出来上がる不織布は変わります。

実際に販売されている生分解性不織布

生分解性不織布は研究段階だけの材料ではなく、国内でも実際に製品化されています。

ユニチカ「テラマック」

ユニチカの「テラマック」は、PLAを用いた樹脂、繊維、不織布などの製品群です。

ユニチカではPLAを使ったスパンボンド不織布を展開してきた実績があり、生分解性を利用した土のうなどの製品例も公開されています。

ここで注意したいのは、ユニチカ自身が「テラマック」のすべてが生分解性ではないと明記していることです。

同じブランド名でも用途や製品仕様が異なるため、生分解性が必要な場合は個別製品の仕様確認が必要です。

金星製紙「PLA(ポリ乳酸)繊維不織布」

金星製紙では、PLA繊維を100%使用した不織布を環境配慮型不織布として展開しています。

同社は、適切な環境下において最終的に微生物により二酸化炭素と水へ分解されると説明しています。

同じ会社では海洋生分解性レーヨン不織布も扱っており、「土壌での生分解」と「海洋での生分解」を分けて製品展開している点も分かりやすい例です。

生分解性不織布を選ぶときに確認すること

実際に生分解性不織布を採用するときは、「環境に良さそうだから」という理由だけでは選べません。

少なくとも次の項目を確認します。

確認項目 実際に確認したいこと
原料 PLA、PBAT、セルロース系など何を使用しているか
原料比率 100%なのか、他素材との複合なのか
分解環境 コンポスト、土壌、海洋など、どこでの分解を想定しているか
認証・試験 どの規格・試験で生分解性を確認しているか
使用期間 使用中に必要な強度を維持できるか
温度 保管・使用時の熱で変形や劣化しないか
目付・厚み 必要な製品性能を満たすか
加工 接着剤やラミネートなどを含めても目的の分解性を保てるか
廃棄方法 実際に想定している分解環境へ廃棄できる仕組みがあるか

「生分解性だから回収しなくていい」とは限らない

生分解性という言葉から、「使用後はそのまま自然に残しても問題ない」と考えるのは避けた方がいいです。

材料によって必要な分解条件は異なりますし、その場所に分解に適した条件があるとは限りません。

また、生分解性を持っていても、分解するまでには一定の時間が必要です。

そのため、本来回収できる用途であれば、従来どおり回収・適正処理する方が合理的な場合もあります。

生分解性が特に意味を持つのは、使用後の回収が難しい用途や、使用環境と廃棄・分解条件をあらかじめ設計できる用途です。

生分解性不織布を実務で見るとき

実際に素材を選定する場合、最初から「生分解性不織布が欲しい」とだけ伝えても、製品を絞り込むのは難しいと思います。

まず確認したいのは、何に使うのかです。

必要な幅、目付、厚み、強度、使用期間、屋内か屋外か、水に濡れるか、熱がかかるか、使用後にどこへ廃棄されるのか。

そこまで決まって初めて、生分解性であることがその用途に本当に必要なのか、PLAなのか別の素材なのかを検討できます。

従来のPETやPPをPLAへ置き換えれば、そのまま同じ製品になるわけではありません。

環境性能も、不織布としての性能の一つとして扱う方が実際の材料選定では分かりやすいです。

参考資料

本記事は、以下のメーカーおよび公的機関の公開情報を確認して作成しています。生分解性は製品・環境・試験条件によって異なるため、実際に採用する場合は各製品の最新仕様をご確認ください。

※「生分解性」という表示だけで、すべての自然環境における分解を保証するものではありません。製品ごとに対象環境、認証、試験条件をご確認ください。

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