不織布はどの工程で品質差が生まれる?|同じ規格でも違いが出る理由

不織布

同じ「PET100%・100g/㎡」の不織布でも、実際に触ってみると違うことがあります。

硬い、柔らかい。厚みが違う。表面の毛羽立ちが違う。引っ張ったときの伸び方が違う。

規格表だけを見ると同じような製品でも、実物まで完全に同じとは限りません。

これは不織布の品質が、素材と目付だけで決まっているわけではないからです。

原料、繊維、ウェブ形成、繊維同士の結合、仕上げ加工。各工程の条件が積み重なって、最終的な不織布になります。

この記事では単純に製造工程を紹介するのではなく、「最終製品のどんな違いにつながるのか」という視点から整理します。

不織布は「素材+目付」だけでは決まらない

不織布を探すとき、最初に確認することが多いのは素材と目付です。

例えば、

  • PET100%
  • 100g/㎡
  • 厚み1mm

といった仕様です。

もちろん、これらは重要な情報です。

しかし、この4項目が同じだからといって、同じ不織布になるとは限りません。

繊維の太さや長さ、繊維の並び方、シートをどのように結合したか、熱や圧力をどの程度加えたか、後からどのような加工をしたかによって、完成品の性質は変わります。

同じ規格に見えるのに実物が違う。

その理由を考えるには、完成した不織布から製造工程を逆にたどってみると分かりやすくなります。

不織布ができるまでの大きな流れ

製法によって工程は異なりますが、不織布の品質を考えるときは大きく次のように分けることができます。

工程 主に決まること
① 原料 素材としての基本的な性質
② 繊維 太さ、長さ、強度など
③ ウェブ形成 目付、均一性、繊維配向など
④ 結合・絡合 強度、厚み、硬さ、風合いなど
⑤ 後加工・仕上げ 親水、撥水、表面状態、寸法など

重要なのは、すべての不織布がこの5工程をまったく同じ形で通るわけではないことです。

スパンボンドのように樹脂から連続繊維を作りながらウェブを形成する製法もあれば、ニードルパンチのように、あらかじめ作られた短繊維からウェブを形成する製法もあります。

製法が違えば、品質差が生まれやすいポイントも変わります。

① 原料の違い

最も上流にあるのが原料です。

「PET」「PP」といった素材名が同じでも、使用する樹脂や繊維が完全に同一とは限りません。

スパンボンドやメルトブローのように樹脂を溶融して繊維を作る場合は、使用する樹脂の特性や添加剤などが紡糸性や最終製品に影響します。

一方、短繊維から不織布を作る場合は、購入する原綿の仕様が重要になります。

素材名だけでなく、どのような繊維を使用しているのかを見る必要があります。

② 繊維の違い

同じPET100%でも、使用する繊維によって不織布は大きく変わります。

例えば、繊維の太さです。

細い繊維を使用する場合と太い繊維を使用する場合では、同じ100g/㎡でも構成する繊維の本数が変わります。

短繊維不織布では繊維長も関係します。

繊維側の違い 影響する可能性があるもの
繊度 風合い、表面状態、構造、強度など
繊維長 絡みやすさ、ウェブ形成、強度など
捲縮 嵩高さ、絡み、ウェブ形成など
繊維強度 不織布の機械的特性など
断面形状 表面積、光沢、機能性など

つまり、「PET100%」という表示は原料の種類を示しているだけで、その不織布の構造まで説明しているわけではありません。

③ ウェブ形成で均一性と方向性が変わる

繊維をシート状に並べたものをウェブと呼びます。

この工程では、繊維をどの程度均一に分散させるか、どの方向へ並べるかが重要になります。

ここで差が出ると、完成品にも

  • 目付のばらつき
  • 厚みのばらつき
  • MD・CD方向の物性差
  • 見た目のムラ

などとして現れることがあります。

見た目では均一に見える不織布でも、一定面積ごとに重量を測定すると差が見つかることがあります。

特に軽量の不織布では、わずかな重量差でも割合としては大きくなります。

MDとCDもここに関係する

不織布には、機械の進行方向であるMD(Machine Direction)と、それに直交するCD(Cross Direction)があります。

繊維の配向に方向性があると、MDとCDで引張強度や伸び方が変わることがあります。

実際にPP30g/㎡のスパンボンドをMDとCD方向へ手で引っ張って比較したところ、方向によって破断の仕方に明確な違いが見られました。

MD・CDについては別記事で実物写真を使って比較しています。

④ 結合・絡合工程で不織布らしさが大きく変わる

形成したウェブは、そのままでは十分な強度を持たないものもあります。

そこで繊維同士を熱で接着したり、針や水流で絡ませたり、接着剤で固定したりします。

この工程は、完成した不織布の強度、厚み、硬さ、風合いなどに大きく関係します。

熱による接着

熱可塑性繊維を熱と圧力によって接着する方法があります。

スパンボンドでは、エンボスロールなどを使って部分的に熱圧着した製品をよく見ます。

温度、圧力、速度、圧着面積などが変われば、接着状態も変わります。

強度を確保するために接着を強くすればよい、という単純なものでもありません。

接着状態を変えると、硬さ、風合い、通気性など他の性質にも影響するためです。

ニードルパンチ

ニードルパンチでは、多数の針をウェブへ繰り返し突き刺し、繊維同士を物理的に絡ませます。

針の種類、針密度、パンチ数、ウェブの構成などによって完成品の状態が変わります。

同じPET100%、同じ目付であっても、ニードリング条件が違えば厚みや硬さ、強度、表面状態が同じになるとは限りません。

スパンレース

スパンレースでは、高圧水流によって繊維を絡ませます。

使用する繊維だけでなく、元となるウェブや水流による絡合条件などによって、完成した不織布の風合いや強度が変わります。

ケミカルボンド

バインダーなどを使用して繊維同士を接着する方法です。

使用するバインダーの種類や量、付着状態、乾燥・硬化条件などによって、硬さや強度、耐久性などが変わります。

⑤ 後加工でも製品は変わる

不織布ができたあとに、さらに加工を加えることがあります。

例えば、

  • 親水加工
  • 撥水加工
  • 帯電防止加工
  • 樹脂加工
  • カレンダー加工
  • ラミネート

などです。

後加工は「機能を一つ追加するだけ」と考えない方がいいです。

加工によっては、風合い、厚み、通気性、硬さなど、もともとの不織布が持っていた性質も変化します。

そのため、素材と不織布製法が同じでも、後加工が違えば別の製品として考える必要があります。

同じ規格なのに違って見えるのはなぜか

ここまでの工程を考えると、「同じPET100%・100g/㎡なのに違う」という現象も不思議ではありません。

100g/㎡という数字が示しているのは、基本的には単位面積あたりの質量です。

厚みや硬さ、繊維の太さ、繊維長、製法、表面状態まで指定しているわけではありません。

例えば同じ100g/㎡でも、厚さ0.5mmの製品と2mmの製品があれば、手に取ったときの印象はまったく違います。

さらに同じ厚みであっても、繊維構造や結合方法が違えば同じ製品にはなりません。

素材と目付が同じ=同等品、とは限らない。

不織布を比較するときに重要なポイントです。

品質差なのか、仕様差なのかを分けて考える

ここは実際に不織布を扱うときに重要です。

2種類の不織布が違っているからといって、必ずしも片方の品質が悪いわけではありません。

例えば、A品よりB品の方が硬かったとします。

これだけではB品の品質が悪いとは言えません。

意図的に硬く設計された別仕様かもしれないからです。

一方、同じ品番の同じ規格品で、本来管理されている範囲を外れて硬さや目付、厚みなどが変動しているのであれば、品質上の問題として確認する必要があります。

そのため、実物に違いを感じたときは、まず

確認 見ること
品番 本当に同一製品か
素材 原料・混率に変更がないか
目付 規格値と実測値
厚み 規格値と測定条件
製法 同じ製造方法・構成か
加工 表面処理や樹脂加工などに違いがないか
ロット 製造ロットが異なるか

といったところから確認します。

不織布で違和感があったとき、どこを見るか

現物を受け取って「以前と少し違う」と感じても、最初から原因となった製造工程を特定するのは難しいです。

まず、何が違うのかを分けます。

感じた違い 確認したい項目の例
厚い・薄い 目付、厚み、密度、結合・仕上げ条件
硬い・柔らかい 繊維、結合状態、樹脂加工、カレンダーなど
破れやすい 目付、MD/CD、繊維、結合状態など
毛羽立つ 繊維構成、絡合・接着状態、表面加工など
ムラが見える ウェブ形成、目付分布、接着・加工状態など
水の吸い方が違う 素材、親水処理、加工量、表面状態など

ここで書いた項目は原因を断定するものではありません。

例えば「硬くなった=熱圧着条件が変わった」と現物だけから決めつけることはできません。

複数の工程が同じ現象に影響するからです。

まず現象を具体的にし、その後に規格や製造履歴を確認して原因を絞っていく方が現実的です。

製法によって見るポイントも違う

製法 品質を見るときの主なポイント
スパンボンド 繊維形成、ウェブ均一性、MD/CD、熱圧着など
メルトブロー 繊維径、ウェブ均一性、目的とする機能など
ニードルパンチ 原綿、ウェブ、ニードリング、厚み、表面状態など
スパンレース 原綿、ウェブ、水流絡合、風合いなど
ケミカルボンド 原綿、ウェブ、バインダー、付着状態など

つまり、不織布を評価するときにすべての製法を同じ項目だけで比較するのは難しいということです。

まず「何でできているか」を確認し、次に「どうやって作られているか」を確認すると、その不織布を見るべきポイントが分かりやすくなります。

不織布を比較するときは規格表と現物の両方を見る

規格表は重要です。

しかし、規格表だけですべてが分かるわけでもありません。

反対に、手触りだけで品質を判断するのも危険です。

例えば厚く感じる製品が、必ず目付の高い製品とは限りません。

嵩高な構造によって厚くなっている可能性もあります。

そのため、材料を比較するときは、

規格表で数字を確認する → 現物を見る・触る → 必要なら測定する

という順番で確認すると違いを整理しやすくなります。

まとめ

不織布の品質や性質は、一つの工程だけで決まるものではありません。

原料、繊維、ウェブ形成、結合・絡合、後加工。それぞれの条件が積み重なって最終製品になります。

そのため、同じPET100%、同じ100g/㎡と表示されていても、実物が同じになるとは限りません。

また、製品に違いがあることと「品質が悪い」ことも同じではありません。

意図された仕様差なのか、本来同じであるはずの製品にばらつきが生じているのかを分けて考える必要があります。

不織布を見るときは、素材と目付だけで判断せず、繊維・製法・方向性・厚み・結合方法・後加工まで含めて見ると、なぜその製品がその性質になっているのかが分かりやすくなります。

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