不織布のMD・CD方向とは|見分け方と強度差が生まれる理由

不織布

不織布には「MD」と「CD」という方向があります。

見た目には同じシートでも、縦に引っ張った場合と横に引っ張った場合で、強度や伸び方が違うことがあります。

実際に不織布を扱うと、幅や長さ、目付、厚みだけでなく「どちらがMDなのか」を確認する場面があります。

特にロール品を加工するときや、製品に一定方向の力が加わる用途では重要です。

この記事では、MD・CDとは何なのかという基本から、実際のPPスパンボンド不織布を手で引っ張った比較まで紹介します。

不織布のMD方向とCD方向とは

MD(Machine Direction)は、不織布を製造するときの機械の進行方向です。

CD(Cross Direction)は、MDに対して直角となる幅方向です。

項目 MD CD
正式名称 Machine Direction Cross Direction
方向 機械の進行方向 機械に対する幅方向
ロール品 基本的に巻き方向 基本的にロール幅方向
物性 繊維配向や製造条件によって強度・伸びなどに差が生じる

例えば幅1m、長さ100mのロール状不織布であれば、100m側がMD、1mの幅側がCDです。

ロールの状態であれば分かりやすいのですが、すでにシート状にカットされた不織布では、どちらがMDなのか分からなくなることがあります。

なぜMDとCDで強度が変わるのか

大きな理由の一つが、繊維の配向です。

不織布は多数の繊維からできていますが、その繊維がすべての方向へ完全に均等に向いているとは限りません。

製法やウェブの形成方法、製造条件によって、特定の方向を向く繊維が多くなることがあります。

引っ張る方向に沿っている繊維が多ければ、それらの繊維が荷重を受けやすくなります。そのため、繊維の向きは不織布の引張強度や伸び方に影響します。

ただし、「不織布は必ずMDの方が強い」という意味ではありません。

繊維の配向、ウェブ形成方法、接着・絡合方法、製造条件などによってMDとCDの物性バランスは変わります。

実際にPPスパンボンドをMD・CD方向へ引っ張ってみる

説明だけでは分かりにくいため、実際の不織布を使ってMDとCDの違いを確認してみました。

使用したのは、PP(ポリプロピレン)100%、目付30g/㎡のスパンボンド不織布です。

同じ不織布から50mm×50mmに切り出した試料を2枚用意しました。

PP100%・30g/㎡のスパンボンド不織布。どちらも50mm×50mmで、写真上方向がMD、左右方向がCD。

この2枚を、一方はMD方向、もう一方はCD方向へ手で引っ張りました。

引張試験機を使用した測定ではなく、方向による違いを見るための簡易的な比較です。

左:MD方向へ引っ張った試料 右:CD方向へ引っ張った試料

今回使用した不織布では、違いがはっきりと現れました。

MD方向へ引っ張った試料は破断せず、CD方向へ引っ張った試料は中央部分が大きく変形して破断しました。

どちらも同じPP100%、30g/㎡のスパンボンドで、同じ場所から同じ50mm×50mmに切り出したものです。

変えたのは、引っ張る方向です。

不織布は素材や目付が同じでも、力が加わる方向によって挙動が変わることがあります。

これが、不織布を扱うときにMDとCDを確認する理由の一つです。

今回の比較で注意したいこと

この写真から「PPスパンボンドは必ずMDの方が強い」と結論づけることはできません。

今回確認できたのは、今回使用したPP30g/㎡スパンボンドでは、手で引っ張ったときにMD方向の方が破断しにくかったということです。

また、手で引っ張っているため、加えた力を一定にした試験でもありません。

MDとCDの引張強度を数値として比較する場合は、同じ条件で試験片を採取し、引張試験機を使って測定する必要があります。

スパンボンドとMD・CDの関係

スパンボンドは、溶融した樹脂を紡糸して連続した繊維を作り、それを移動するコンベアなどの上に集積してシート化する製法です。

製造条件によって繊維の配向に方向性が生じるため、MDとCDで引張強度や伸びに差が出ることがあります。

今回使用したPPスパンボンドでも、手で引っ張った簡易比較ではMDとCDで明確に違う挙動が見られました。

実際の不織布の規格表や試験成績表でも、引張強度がMDとCDに分けて記載されていることがあります。

そのため、「PP100%・30g/㎡」という情報だけでは、その不織布の引張特性までは判断できません。

短繊維不織布ではウェブの作り方も重要

ニードルパンチやスパンレースなど、短繊維を使用する不織布では、まず繊維をシート状に並べてウェブを作ります。

この段階で繊維をどのように並べるかによっても、MDとCDの物性差が変わります。

パラレルウェブ

カード機などで繊維を一定方向に並べて形成したウェブでは、MD側を向く繊維が多くなる場合があります。

その状態で不織布にすると、MDとCDで物性差が生じることがあります。

ただし、その後の絡合方法や加工条件によっても最終的な物性は変わります。

クロスレイドウェブ

カードで作ったウェブを、機械方向に対して交差するように折り重ねて積層する方法があります。

クロスレイ、クロスラップなどと呼ばれる方法です。

一方向に偏っている繊維配向を幅方向にも分散させ、MDとCDの物性バランスを調整するために使われます。

ただし、クロスレイを行えばMDとCDが完全に同じ物性になるわけではありません。

ウェブを重ねる角度やドラフト、その後の絡合条件などによって最終的な方向性は変わります。

ニードルパンチでもMD・CD差は残る

ニードルパンチ不織布は、ウェブに針を繰り返し突き刺し、繊維同士を物理的に絡ませて作ります。

ニードリングによって繊維の状態は変化しますが、元のウェブが持っていた方向性が必ず完全になくなるわけではありません。

そのため、同じ素材、同じ目付、同じ厚みのニードルパンチ不織布でも、ウェブの形成方法やニードリング条件などによってMDとCDの引張特性が変わることがあります。

スパンレースにもMD・CDがある

スパンレースは、高圧の水流によって繊維同士を絡ませてシート化する方法です。

水流によって繊維が絡み合いますが、元となるウェブの繊維配向や製造条件などの影響を受けるため、完成した不織布にもMDとCDの物性差が生じることがあります。

そのため、「水流で絡ませているから方向性がない」とは限りません。

MDとCDはどうやって見分けるのか

ロールの状態なら比較的簡単です。

ロールから引き出す方向がMD、ロールの幅方向がCDです。

問題になるのは、すでにカットされたシートだけが手元にある場合です。

製造元に確認する

最も確実なのは、製造元や仕入先に確認することです。

方向管理が必要な用途であれば、見た目や手触りだけで判断せず、MD・CDを確認した方が確実です。

表面の繊維配向を見る

不織布によっては、表面をよく見ると繊維が一方向へ多く並んでいることがあります。

この繊維配向から方向を推測できる場合があります。

ただし、細い繊維を使用したものや、配向が分かりにくい不織布では肉眼で判断するのは困難です。

方向を変えて引っ張ってみる

方向性の大きい不織布であれば、今回のPPスパンボンドのように、方向を変えて引っ張ることで伸び方や破断の仕方に違いが出ることがあります。

ただし、これはMD・CDを確定するための正式な試験方法ではありません。

あくまで方向性の有無を確認する簡易的な方法として考えます。

MD・CDは加工するときにも重要

MDとCDを確認するのは、単純に「どちらが強いか」を知るためだけではありません。

不織布を加工して製品にするときにも方向性が関係します。

加工・使用場面 MD・CDが関係する理由
スリット 加工方向や張力によって伸び方が変わる場合がある
巻取り 伸びや収縮の方向差が巻姿に影響する場合がある
打ち抜き 製品をどの方向に取るかで強度が変わる場合がある
縫製 荷重方向と不織布の方向によって破れ方が変わる場合がある
製品設計 実際に力が加わる方向と必要な強度を考える必要がある

例えば、細長い製品を不織布から打ち抜く場合を考えます。

製品の長手方向をMDに取る場合とCDに取る場合では、同じ素材、同じ目付、同じ形状でも引張時の挙動が変わる可能性があります。

材料そのものを変更していないのに製品の伸び方や破れ方が変わった場合、材料の取り方向が変わっていないかを確認することも一つの方法です。

MD・CDは強度だけを見ればいいわけではない

方向によって変わる可能性があるのは引張強度だけではありません。

伸び、引裂き、剛軟度などについても方向別に評価される場合があります。

また、MDとCDの差が小さければ必ず優れた不織布というわけでもありません。

使用時に一方向へ大きな荷重が加わる製品なら、その方向へ必要な強度を持たせる設計が合理的な場合もあります。

反対に、さまざまな方向から力が加わる用途では、MDとCDの物性差が小さい方が使いやすいこともあります。

重要なのは、MDとCDのどちらが強いかではなく、その方向性が最終用途に合っているかです。

不織布の規格表ではMD・CDまで確認する

不織布の規格表や試験成績表を見るときは、「引張強度」という数字だけでなく、MDとCDが分けて記載されていないか確認します。

同じ素材、同じ目付の不織布でも、MDが強くCDとの差が大きい製品もあれば、MDとCDの差が比較的小さい製品もあります。

特に加工して最終製品に使用する場合は、材料の方向と、完成品に実際に力が加わる方向を合わせて考えることが重要です。

まとめ

MDは不織布を製造するときの機械の進行方向、CDはそれに直交する幅方向です。

不織布では、繊維の配向やウェブ形成方法、接着・絡合方法などによって、MDとCDで強度や伸びなどの物性が異なることがあります。

今回実際にPP100%・30g/㎡のスパンボンドを同じ50mm×50mmに切り出して手で引っ張ったところ、MD方向では破断せず、CD方向では大きく変形して破断しました。

もちろん、この結果がすべてのスパンボンド不織布に当てはまるわけではありません。

それでも、同じ素材・同じ目付の不織布でも、方向によって挙動が変わることを知るには分かりやすい例だと思います。

不織布を見るときは、素材、目付、厚み、製法だけでなく、MD・CDとその方向別の物性まで確認すると、製品の特徴をより正確に判断できます。

参考資料

MD・CDの定義や不織布の方向別物性については、不織布の試験方法やメーカー・技術資料などでもMDとCDを分けて評価しています。

※MD・CDの物性差は、不織布の素材、製法、繊維配向、目付、接着・絡合条件などによって異なります。また、本記事の実物比較は引張試験機を使用した測定ではなく、手作業による簡易比較です。

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