ゴアテックスとは?防水・透湿の仕組みとePE・ePTFEの違いを解説

編物

「GORE-TEX(ゴアテックス)は防水なのに蒸れにくい」

アウトドアウェアやスニーカー、ブーツなどで、一度は聞いたことがあると思います。

しかし、GORE-TEXとは何なのでしょうか。

ポリエステルやナイロンのような繊維の名前ではありません。

また、「GORE-TEXという生地が1種類存在する」という理解も正確ではありません。

GORE-TEX プロダクトの中心にあるのは、非常に薄いメンブレン(膜)と、それを表生地などのテキスタイルと組み合わせたラミネート構造です。

この構造によって、防水性・防風性を確保しながら、衣服内部で発生する水蒸気を外へ逃がすことを可能にしています。

この記事では、GORE-TEXとは何なのかを、アパレルブランドの紹介ではなく、繊維・メンブレン・ラミネート・撥水加工という素材側から解説します。

GORE-TEX(ゴアテックス)とは

GORE-TEXは、W. L. Gore & Associates(ゴア)が展開するプロダクトテクノロジーです。

代表的なGORE-TEX プロダクトは、

  • 耐久防水性
  • 防風性
  • 透湿性

を組み合わせた機能を特徴としています。

ジャケットやパンツだけでなく、フットウェアやグローブなどにも使用されています。

ここでまず覚えておきたいのが、

GORE-TEX=ポリエステルやナイロンのような繊維素材ではない

ということです。

GORE-TEXの中心にある「メンブレン」とは

GORE-TEXの構造を理解するうえで重要なのが、メンブレン(membrane)です。

メンブレンとは、簡単にいえば非常に薄い膜です。

現在のGORE-TEX公式情報では、GORE-TEX メンブレンには主に、

  • ePE(延伸ポリエチレン)
  • ePTFE(延伸ポリテトラフルオロエチレン)をベースとした構造

が使われています。

GORE-TEX公式では、多くの場合、これらにPU(ポリウレタン)を組み合わせた非常に薄い二重構造のメンブレンとして説明されています。

そして、このメンブレンを単体で衣服として使うわけではありません。

テキスタイルと組み合わせ、ラミネートを形成して使用します。

GORE-TEXは「膜+生地」で考えると分かりやすい

一般的な衣料では、ポリエステルやナイロンなどの繊維から糸を作り、その糸から織物や編物を作ります。

GORE-TEX プロダクトでは、それだけではありません。

イメージとしては、

表生地

GORE-TEX メンブレン

裏側のテキスタイルなど

という複数の層を組み合わせた構造を考えると分かりやすくなります。

実際の構成は製品・用途によって異なりますが、重要なのはメンブレン単体ではなく、複数素材を組み合わせたラミネートとして製品化されているという点です。

なぜ水を通さないのに蒸れにくいのか

GORE-TEXを説明するときによく出てくるのが、

「雨は通さないが、汗は外へ逃がす」

という表現です。

ここで注意したいのが、「汗」と「水蒸気」を区別することです。

GORE-TEXの透湿性とは、液体の汗そのものをメンブレンの反対側へ押し出すという意味ではありません。

衣服内部で発生した水蒸気を外側へ移動させる性能です。

つまり、

外側:雨などの液体の水

メンブレンが水の侵入を防ぐ

一方で、

内側:身体から発生する湿気

水蒸気として外へ移動する

という考え方です。

これによって、防水性と透湿性を両立しています。

「防水」と「撥水」は違う

GORE-TEXを理解するときに非常に重要なのが、防水と撥水を分けることです。

性能 役割
防水 水が生地を通過することを防ぐ
撥水 表面で水をはじきやすくする
透湿 衣服内部の水蒸気を外へ移動させる
防風 風が生地を通過することを防ぐ

GORE-TEXの場合、防水性を担う重要な部分がメンブレンです。

一方、多くのGORE-TEX プロダクトでは、表生地にDWR(Durable Water Repellent:耐久撥水)加工が施されています。

このDWRによって、表面に付いた水が玉状になって転がり落ちやすくなります。

つまり、

メンブレンによる防水

と、

表生地のDWRによる撥水

は別の機能です。

撥水が落ちてもGORE-TEXの防水性がなくなったとは限らない

これは実際にGORE-TEX製品を使用するときにも重要です。

長期間使用していると、新品のころのように水滴が表面を転がらず、生地表面が濡れることがあります。

これだけを見ると、

「GORE-TEXの防水性能がなくなった」

と思うかもしれません。

しかし、必ずしもそうではありません。

GORE-TEX公式も、DWRの効果が低下して表生地が水を含んでも、メンブレンによる防水性そのものが失われたことを意味するわけではないと説明しています。

ただし表生地が水を含むと、冷たく湿った感覚が生じたり、快適性が低下したりします。

そのため、GORE-TEX製品ではDWRのメンテナンスも重要です。

なぜ表生地が濡れると蒸れたように感じるのか

メンブレンが水を通していなくても、表生地が大量の水を含むと着用感は悪化します。

表面が濡れた状態になると、生地が冷たく感じたり、衣服内部の水蒸気が外へ移動しにくく感じたりすることがあります。

そのためGORE-TEXでは、メンブレンだけでなく表生地のDWRも快適性を維持する重要な要素になっています。

「防水膜があるから表面の撥水は必要ない」というわけではありません。

耐水圧とは

防水素材を調べると「耐水圧」という言葉が出てきます。

耐水圧は、生地がどの程度の水圧に耐えられるかを見るための指標です。

GORE-TEX公式によると、GORE-TEX ラミネートは耐水圧28,000mmを超える同社の防水基準を満たすよう設計・試験されています。

ただし、数値だけで衣服としての性能すべてが決まるわけではありません。

完成したジャケットでは、生地だけでなく、

  • 縫い目
  • シーム処理
  • ファスナー
  • ポケット
  • 製品設計

なども防水性能に関係します。

生地だけGORE-TEXなら完成品も防水なのか

ここはGORE-TEXの特徴を理解するうえで面白い部分です。

防水性のあるラミネートを使用していても、縫製すれば針によって穴が開きます。

そのため防水ウェアでは、縫い目からの浸水を防ぐための処理も必要になります。

GORE-TEXでは素材だけでなく、完成品についてもテストを行っています。

公式には、マテリアル、プロトタイプ、完成製品という段階で評価を行い、採用ブランドが製造する最終製品についても基準を満たすことを確認しています。

つまり、GORE-TEXはメンブレンだけを見るのではなく、完成した製品まで含めたシステムとして考えると理解しやすくなります。

ePTFEとは

従来のGORE-TEXを語るうえで重要なのが、ePTFE(expanded polytetrafluoroethylene:延伸ポリテトラフルオロエチレン)です。

PTFEを特殊な方法で延伸することで、多孔質の非常に薄い構造を作ります。

この技術は長年GORE-TEXを代表する技術として使用されてきました。

現在でもGORE-TEX公式は、製品に使用されるメンブレンの一つとしてePTFEを挙げています。

現在はePEメンブレンも使われている

現在のGORE-TEXを理解するなら、ePTFEだけを説明して終わるのは不十分です。

次世代GORE-TEX プロダクトでは、ePE(expanded polyethylene:延伸ポリエチレン)メンブレンが採用されています。

GORE-TEX公式では、このePEメンブレンについて、薄く軽量でありながら強度を持ち、耐久防水性・透湿性・防風性を実現すると説明しています。

さらに、ePEメンブレンを使用した次世代ラミネートでは、DWRを含めてPFASを意図的に添加せず製造されています。

※GORE-TEX公式では「PFAS-free」を「意図的に添加されたPFASを使用せず製造。微量含まれる可能性がある」と定義しています。

ePTFEとePEは何が違う?

項目 ePTFE ePE
名称 延伸ポリテトラフルオロエチレン 延伸ポリエチレン
GORE-TEXでの位置付け 従来から使用されてきた代表的メンブレン 次世代GORE-TEXで採用されるメンブレン
フッ素 フッ素系ポリマー ポリエチレン系
主な役割 防水・防風・透湿 防水・防風・透湿
PFAS対応 製品仕様による確認が必要 次世代ラミネートはPFASを意図的に添加せず製造

重要なのは、

「GORE-TEX=ePTFE」だけでは現在の製品を説明できなくなっている

という点です。

GORE-TEXとPFASの関係

GORE-TEXとPFASの関係は、近年大きく変化している部分です。

従来のGORE-TEXでは、ePTFEを使ったメンブレンやフッ素系DWRなどが使用されてきました。

一方、現在はePEメンブレンとPFASフリーDWRを組み合わせた次世代GORE-TEX プロダクトが展開されています。

ここで注意したいのは、

「現在販売されているGORE-TEXはすべて同じメンブレン」

ではないことです。

製品世代や用途によって構成が異なるため、具体的な製品について確認する場合は、その製品の仕様を見る必要があります。

PFASや非フッ素撥水については、別記事で詳しく解説しています。

2層・3層とは何なのか

防水透湿ウェアでは「2レイヤー」「3レイヤー」といった表現を見かけます。

これは、単純に「生地が厚い・薄い」という意味ではなく、ラミネートの構成に関係する言葉です。

例えば3層構造では、基本的な考え方として、

表生地

メンブレン

裏側の保護テキスタイル

を一体化した構造になります。

一方、2層構造ではメンブレンを表生地へラミネートし、裏地を別構造とするものがあります。

ただし、具体的な構造は各GORE-TEXプロダクトテクノロジーによって異なるため、「2層だから必ず○○」「3層だから必ず○○」と性能を断定することはできません。

GORE-TEX PROとの違い

GORE-TEXには用途に応じて複数のプロダクトテクノロジーがあります。

GORE-TEX PROは、その中でも過酷な環境や要求の高いアクティビティ向けに設計されたシリーズです。

一方、通常のGORE-TEX ガーメントは、日常的なアウトドアライフまで含めた幅広い用途を想定しています。

そのため、

PRO=単純な上位互換

と考えるよりも、用途に合わせた製品設計の違いとして見る方が適切です。

「GORE-TEX」と書いてあれば全部防水?

ここも現在の製品を見るときには注意が必要です。

GORE-TEX公式によると、現在「GUARANTEED TO KEEP YOU DRY」の黒いひし形ラベルが付いたGORE-TEX プロダクトが、防水性を保証するシリーズです。

一方、GORE-TEX LABSには、WINDSTOPPER® プロダクトもあります。

こちらは防風性と透湿性を重視した製品で、GORE-TEXの名称と関係していても、通常の防水GORE-TEX プロダクトとは位置付けが異なります。

したがって、製品を見るときはブランド名だけでなく、どのプロダクトテクノロジーなのかを確認する必要があります。

GORE-TEXだから蒸れない、ではない

GORE-TEXは透湿性を持ちますが、

「着ていれば絶対に蒸れない」

という意味ではありません。

人間が発生させる汗の量、外気温、湿度、運動量、衣服内部の温度、インナーや中間着などによって着用環境は変化します。

透湿性とは、水蒸気を外へ移動させる能力です。

発汗量や環境条件によっては、水分の発生量が排出量を上回ることもあります。

そのため、GORE-TEX=絶対に蒸れない、と説明するのは正確ではありません。

GORE-TEXの表地は何でできている?

GORE-TEX製品を見ると、品質表示には「ナイロン100%」「ポリエステル100%」などと書かれていることがあります。

これはGORE-TEXと矛盾しません。

GORE-TEXはナイロンやポリエステルそのものの名称ではないからです。

例えば、

ナイロンの表生地

GORE-TEX メンブレン

裏側のテキスタイル

といった組み合わせを作ることができます。

つまり、衣服の素材表示と、搭載されているGORE-TEXテクノロジーは別の情報として見る必要があります。

同じGORE-TEXでも着心地が違う理由

ここまで理解すると、同じGORE-TEXでも製品によって着心地が違う理由が分かります。

完成した衣服の性質には、メンブレンだけではなく、

  • 表生地の素材
  • 糸の太さ
  • 織物の構造
  • 目付
  • ラミネート構造
  • 裏側の素材
  • DWR
  • 縫製仕様
  • 製品デザイン

などが関係します。

そのため、

「GORE-TEXだから全部同じ」ではありません。

GORE-TEXは完成した衣服を構成する非常に重要な技術ですが、それだけで製品の着心地や重量、耐久性などがすべて決まるわけではありません。

アパレルを見るときは「素材表示」だけでは分からない

これはGORE-TEXに限った話ではありません。

服の品質表示には繊維組成が記載されています。

しかし、

ポリエステル100%

と書かれた2着が、同じ性能になるわけではありません。

織物か編物か、糸はどうなっているか、どんな加工がされているか、他の素材とラミネートされているかによって製品性能は変わります。

GORE-TEXは、「服は繊維の種類だけでは説明できない」ことが非常に分かりやすい例です。

まとめ

GORE-TEXは、ポリエステルやナイロンのような繊維そのものの名称ではありません。

中心にあるのは、防水・防風・透湿機能を担う非常に薄いメンブレンと、それをテキスタイルと組み合わせたラミネート技術です。

また、表生地のDWRによる「撥水」と、メンブレンによる「防水」は分けて考える必要があります。

現在では従来から使用されてきたePTFEだけでなく、次世代GORE-TEX プロダクトでePEメンブレンも使用されています。

そして同じGORE-TEXでも、表生地、ラミネート構造、裏側の素材、DWR、製品設計などによって性質は変わります。

服を見るときに重要なのは、

「GORE-TEXだから高機能」で終わらず、その服がどのような素材と構造で作られているのかを見ることです。

これはGORE-TEXだけでなく、機能性衣料全般を理解するときにも使える考え方です。

参考資料

※GORE-TEXの製品構成・プロダクト名称・採用メンブレンは製品や世代によって異なります。本記事は2026年8月時点のGORE-TEX公式情報を基に整理しています。個別製品の仕様については各製品メーカーおよびGORE-TEX公式情報を確認してください。

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