不織布の仕様書を見ると、「20g/㎡」「30g/㎡」「100g/㎡」といった数字がよく出てきます。
この数字が目付(めつけ)です。
目付は不織布を比較するときの最も基本的な数値の一つですが、
「目付が高い=厚い」
「目付が高い=強い」
と単純に考えると、実際の製品選定では間違えることがあります。
目付が示しているのは、あくまで単位面積あたりの質量です。
この記事では、不織布の目付とは何なのか、g/㎡の意味、厚みや強度との関係を、実物のPPスパンボンド20g/㎡と30g/㎡も使いながら解説します。
不織布の目付とは
目付とは、一定面積あたりの質量を表す数値です。
不織布では一般に、
g/㎡(グラム毎平方メートル)
で表します。
例えば、
30g/㎡
と表示されている不織布は、理論上1㎡あたりの質量が30gであることを意味します。
ISO 9073-1でも、不織布の単位面積当たり質量を測定し、g/㎡で表す試験方法が定められています。
「30g/㎡」は何を意味している?
例えば、縦1m×横1mの不織布があるとします。
面積は1㎡です。
この1㎡のシートの質量が30gであれば、目付は、
30g/㎡
です。
同じように、1㎡あたり20gなら20g/㎡、100gなら100g/㎡となります。
目付の計算方法
基本的な計算は非常に単純です。
目付(g/㎡)=試験片の質量(g)÷試験片の面積(㎡)
です。
例えば、10cm×10cmの試験片を測ったとします。
10cm×10cmは、
0.1m × 0.1m = 0.01㎡
です。
この試験片が0.30gだった場合、
0.30g ÷ 0.01㎡ = 30g/㎡
となります。
つまり、小さな試験片でも面積が分かれば、1㎡あたりの質量へ換算できます。
実物で20g/㎡と30g/㎡を比較する
ここでは、手元にあるPP(ポリプロピレン)スパンボンド不織布を比較します。
使用するのは、
- PPスパンボンド 20g/㎡
- PPスパンボンド 30g/㎡
です。
どちらもPPスパンボンドなので、素材と製法の大きな分類をそろえたうえで目付の違いを見ることができます。
PPスパンボンド 20g/㎡

20g/㎡のサンプルです。
薄手のスパンボンドでは、背景が透けやすく、繊維間の空隙も視覚的に確認しやすくなります。
ただし、透け方は目付だけでなく、繊維径、繊維配向、エンボスパターン、色、製造条件などによっても変わります。
PPスパンボンド 30g/㎡

こちらは30g/㎡です。
20g/㎡よりも単位面積あたりに存在する材料の質量が大きくなっています。
今回の実物でも、20g/㎡と30g/㎡では見え方に違いがあります。
ただし、写真だけから厚みや強度を定量的に判断することはできません。
20g/㎡と30g/㎡では何が違うのか
| 項目 | PP 20g/㎡ | PP 30g/㎡ |
|---|---|---|
| 素材 | PP | PP |
| 製法 | スパンボンド | スパンボンド |
| 目付 | 20g/㎡ | 30g/㎡ |
| 単位面積あたり質量 | 少ない | 多い |
| 外観 | 比較的薄く見える | 比較的密に見える |
同じPPスパンボンドという条件であれば、30g/㎡は20g/㎡よりも1㎡あたり10g多く材料が存在することになります。
比率で見ると、30g/㎡は20g/㎡の1.5倍の単位面積質量です。
ただし、これは「厚みも1.5倍」「強度も1.5倍」という意味ではありません。
目付が高いほど厚くなる?
一般には、同じ素材・同じ製法・近い製造条件であれば、目付が高くなると厚みも増える傾向があります。
しかし、目付と厚みは別の物性です。
ISOの不織布試験でも、単位面積当たり質量と厚みは別々の試験項目として扱われています。
目付は「面積あたりの重さ」であり、厚みは「シートの厚さ」です。
同じ100g/㎡でも、
- ふくらみが大きい不織布
- 強く圧縮された不織布
では、厚みが大きく異なることがあります。
実際下記資料のように30gで0.15mmです。
写真は無いですが20gで0.14mmのものも確認出来ました。
±の公差や圧着方法で厚みは変わります。

同じ目付でも厚みが違う理由
例えば、どちらも100g/㎡だったとしても、製法が違えば厚みは大きく変わります。
厚みに影響する代表的な要素には、
- 繊維の太さ
- 繊維長
- 繊維配向
- ウェブ形成方法
- 結合方法
- カレンダー圧
- ニードルパンチ条件
- 樹脂量
- 熱収縮
などがあります。
例えば、ニードルパンチ不織布は嵩高な構造を作ることができる一方、スパンボンドを強くカレンダー処理すれば、同じ程度の目付でも比較的薄いシートを作れます。
そのため、
目付=厚み
ではありません。
目付が高いほど強くなる?
これもよくある疑問です。
同じ素材・同じ製法・同じような製造条件で比較すれば、目付が増えることで強度が上がる場合があります。
単位面積あたりに存在する繊維量が増えるため、荷重を受け持つ繊維も増えやすいからです。
しかし、
目付が高い=必ず強い
とはいえません。
強度は目付以外にも左右される
不織布の強度には、
- 素材
- 繊維径
- 繊維長
- 繊維配向
- 結合方法
- エンボス面積
- 熱接着条件
- ニードル密度
- 樹脂量
- MD・CD方向
などが影響します。
例えば50g/㎡の不織布でも、繊維同士の結合が弱ければ、30g/㎡の高強度タイプより弱い場合があります。
また、不織布ではMD方向とCD方向で強度が異なることもあります。
つまり、強度を見る場合には目付だけではなく、製法と繊維配向まで確認する必要があります。
目付とMD・CDの関係
目付が同じでも、MD方向とCD方向の引張強度が同じとは限りません。
不織布では製造工程によって繊維が一定方向へ配向しやすくなります。
特に機械方向であるMD方向へ繊維が多く配向したウェブでは、MDとCDで物性差が生じることがあります。
例えば、
PPスパンボンド30g/㎡
という情報だけでは、MD・CDそれぞれの引張強度までは分かりません。
目付は重量の指標、MD・CD強度は方向性を含む物性として別々に確認します。
目付が同じなら同じ不織布?
いいえ。
ここは不織布を扱ううえで非常に重要です。
例えば、
30g/㎡
という目付が同じでも、
- PPスパンボンド
- PETスパンボンド
- 短繊維サーマルボンド
- スパンレース
- メルトブローン
では全く違う製品になります。
さらに同じPPスパンボンド30g/㎡でも、メーカーや品番、繊維径、エンボス条件、添加剤などが違えば物性や風合いも変わります。
目付と密度も同じではない
目付と混同されやすいものに「密度」があります。
目付は単位面積あたりの質量です。
一方、密度は体積あたりの質量を表します。
概念的には、
密度 = 目付 ÷ 厚み
のような関係で考えることができます。
そのため、同じ100g/㎡でも、厚みが大きい不織布は嵩高で見かけ密度が低くなり、薄く圧縮された不織布は見かけ密度が高くなります。
これが、「同じ目付なのに触った感じが全く違う」理由の一つです。
目付と通気性の関係
目付が増えると、一般には単位面積あたりの繊維量が増えます。
そのため同じ製法・近い条件であれば、通気性が低下する方向に働くことがあります。
しかし、通気性も目付だけでは決まりません。
例えば、
- 繊維径
- 空隙率
- 繊維配向
- 結合面積
- 厚み
などによって空気の通り道が変わります。
したがって、
目付が高い=必ず通気性が低い
とも断定できません。
目付と遮蔽性の関係
薄手の不織布では、目付の違いが外観にも現れやすくなります。
今回のPP20g/㎡と30g/㎡でも、背景の見え方に違いがあります。
同じ素材・製法で繊維量が増えれば、一般には光を遮る繊維も増えるため、遮蔽性が変化することがあります。
ただし、これも、
- 繊維径
- 顔料
- 色
- エンボス
- 繊維分散
などの影響を受けます。
目付だけで遮光率などを判断することはできません。
目付と価格の関係
同じ素材・同じ製法・同じ条件で考えれば、目付が高くなるほど単位面積あたりに使用する原料量は増えます。
そのため、原料コストだけを見れば価格が上昇する要因になります。
例えば、PP20g/㎡からPP30g/㎡へ変更すると、理論上は単位面積あたりのポリマー使用量が50%増えます。
しかし、製品価格は原料量だけでは決まりません。
実際には、
- 加工速度
- 生産ロット
- 原反幅
- 巻長
- 添加剤
- 後加工
- 歩留まり
- 包装
- 輸送
なども影響します。
そのため「目付が1.5倍だから価格も1.5倍」とは限りません。
目付の公差にも注意する
実際の不織布は、すべての位置が完全に同じ目付になるわけではありません。
製造工程では、幅方向や流れ方向に一定のばらつきが生じます。
そのため製品規格では、
30g/㎡ ± ○%
のように許容範囲を設定することがあります。
特に物性や加工安定性が重要な用途では、平均目付だけでなく、目付の均一性も重要になります。
なぜ目付の均一性が重要なのか
例えば原反の中央が30g/㎡でも、端部が大きく薄くなっていれば、
- 強度
- 通気性
- 遮蔽性
- 吸水量
- 加工安定性
などにばらつきが出る可能性があります。
そのため製造現場では、単純な平均値だけでなく、幅方向・流れ方向での均一性も品質管理上の重要な項目になります。
不織布を選ぶときは目付だけで決めない
例えば「現在30g/㎡を使っているので、他社の30g/㎡なら同じ」と考えるのは危険です。
最低でも、
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 素材 | PP、PET、レーヨンなど |
| 製法 | スパンボンド、スパンレース、ニードルパンチなど |
| 目付 | g/㎡ |
| 厚み | mmなど |
| 強度 | MD・CDの引張強度など |
| 伸度 | MD・CDの伸び |
| 通気性 | 用途に必要な空気の通りやすさ |
| 加工 | 親水、撥水、帯電防止など |
を確認した方が安全です。
「30g」とだけ書かれていたら注意
不織布の取引や仕様書では「30g」と略して呼ばれることがあります。
実務上は30g/㎡を意味しているケースが多いですが、本来は単位まで確認した方が確実です。
なぜなら、
30g/㎡
と、
製品1枚あたり30g
では全く意味が違うからです。
仕様確認では、必ずg/㎡なのかを確認します。
gsmとは何か
海外の仕様書では、g/㎡の代わりにGSMという表記を見ることがあります。
GSMは、
grams per square metre
を表す表現です。
つまり、
30 GSM = 30g/㎡
と考えて構いません。
不織布だけでなく、紙、生地、各種シート材料でも使われる表現です。
目付が倍なら厚みも強度も倍になる?
なりません。
例えば50g/㎡から100g/㎡へ目付を倍にしても、厚みや引張強度が必ず2倍になるわけではありません。
不織布は繊維の集合体なので、目付が増えたときに、
- 繊維がどの方向へ配置されたか
- どれだけ圧縮されたか
- どの程度結合されたか
- 繊維径が変わっていないか
によって結果が変わります。
目付は重要な基本仕様ですが、性能そのものを表す数値ではありません。
実物を見ると目付の意味が分かりやすい
今回使用したPP20g/㎡とPP30g/㎡は、どちらも薄手のスパンボンド不織布です。
数字だけを見ると差は10g/㎡ですが、30g/㎡は20g/㎡に対して単位面積質量が50%多くなります。
実物を並べると、その違いを視覚的にも確認できます。
ただし、その見た目だけから、
厚みが何%増えた
強度が何%増えた
通気度が何%低下した
と判断することはできません。
それぞれを知るには、別の物性測定が必要です。
まとめ
不織布の目付とは、単位面積あたりの質量です。
一般にg/㎡で表され、海外資料ではGSMと表記されることもあります。
例えば30g/㎡は、1㎡あたり30gの質量を持つことを意味します。
目付が高くなると、同じ素材・製法・近い条件であれば、厚みや強度、遮蔽性などが増える方向に変化することがあります。
しかし、
目付が高い=必ず厚い
目付が高い=必ず強い
ではありません。
不織布の性能には、
素材 → 繊維径 → 繊維配向 → 製法 → 目付 → 厚み → 結合条件 → 後加工
など、多くの要素が関係します。
そのため、不織布を選ぶときは「30g/㎡だから同じ」と考えず、目付を基本仕様の一つとして、厚み、MD・CD強度、通気性、加工などと合わせて確認することが重要です。
↓目付計算ツールを用意したのでご使用ください。
参考資料
- ISO 9073-1:2023 Nonwovens — Test methods — Part 1: Determination of mass per unit area
不織布の単位面積当たり質量の測定方法について参照。 - ISO 9073 series — Nonwovens — Test methods
不織布における単位面積質量、厚み、引張強度、通気性などがそれぞれ独立した試験項目として扱われていることを参照。 - EDANA「What are nonwovens?」
不織布の構造、製法、用途に関する基礎情報を参照。 - INDA「About Nonwovens」
不織布の強度、吸収性、通気・バリア性など、用途に応じて設計される各種性能について参照。
※本記事に掲載するPP20g/㎡・PP30g/㎡の写真は、手元の実物サンプルを撮影したものです。写真による比較は外観の違いを示すものであり、厚み・引張強度・通気度などを定量的に比較した試験ではありません。




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