織機とは?シャトル・レピア・エアジェット・ウォータージェットの違いを解説

織物

織物は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を一定の規則で交差させて作ります。

その織物を作る機械が織機(しょっき・loom)です。

織機には、シャトル織機、レピア織機、エアジェット織機、ウォータージェット織機など複数の種類があります。

これらの大きな違いの一つが、緯糸を経糸の間へどのように通すかです。

例えばエアジェット織機は空気、ウォータージェット織機は水、レピア織機はレピアと呼ばれる機構を使って緯糸を運びます。

この記事では、織機の基本構造と動き、主要な織機の違い、どのような糸・織物に向いているのかを整理します。

織機とは

織機は、経糸と緯糸を交差させて織物を形成するための機械です。

織機には多くの形式がありますが、織物を作る基本的な動きは共通しています。

代表的なのが、

  • 開口
  • 緯入れ
  • 筬打ち

です。

動作 内容
開口 経糸を上下に分け、緯糸が通る空間を作る
緯入れ 開口された経糸の間へ緯糸を通す
筬打ち 挿入された緯糸を織前まで押し込み、所定の位置へそろえる

実際の織機では、このほかにも経糸の送り出しや、出来上がった織物の巻取りなどが連続して行われます。

織機の違いは「緯糸をどう入れるか」で見ると分かりやすい

織機を分類するとき、最も分かりやすいポイントの一つが緯入れ方式です。

織機 緯糸の挿入方法 特徴
シャトル織機 緯糸を巻いたシャトルを往復させる 従来型の方式
レピア織機 レピアで緯糸を把持して運ぶ 対応できる糸・織物の範囲が広い
エアジェット織機 圧縮空気で緯糸を搬送する 高速生産に適する
ウォータージェット織機 水流で緯糸を搬送する 疎水性合成繊維などに適する
プロジェクタイル織機 小型の投射体で緯糸を運ぶ 広幅・産業資材などにも利用される

ただし、「織機の種類=作れる生地が一種類に決まる」という意味ではありません。

糸、織幅、組織、生産速度、必要品質などによって適した設備は変わります。

シャトル織機

シャトル織機は、緯糸を巻いたボビンを内部に持つシャトルを、織幅方向へ往復させて緯糸を挿入する方式です。

ニッセンケンでも、シャトルが生地幅方向へ往復することで緯糸を打ち込む方式として説明されています。

現在の高速量産用織機ではシャトルレス方式が広く使われていますが、シャトル織機は織物の仕組みを理解するうえで重要です。

シャトル織機とセルビッジ

シャトル織機では一本の緯糸が生地端で折り返しながら連続して織られるため、織物の両端に耳を形成できます。

デニムでよく聞く「セルビッジ」は、この耳部分に注目した言葉です。

ただし、セルビッジデニム=すべて昔ながらのシャトル織機だけで作られると単純化せず、実際の設備や製品仕様を確認する方が確実です。

レピア織機

レピア織機は、レピアと呼ばれる細長い機構で緯糸を把持し、経糸の開口部へ運ぶ方式です。

ニッセンケンでは、レピアの先端で緯糸を保持し、往復移動によって緯糸を送る織機として整理されています。

レピア方式には、一本のレピアで緯糸を運ぶ方式や、左右からレピアを出して中央付近で緯糸を受け渡す方式などがあります。

レピア織機の特徴

レピア織機の大きな特徴は、緯糸を機械的に把持して搬送できることです。

そのため、さまざまな種類・太さの緯糸に対応しやすく、多色緯糸や複雑な織物にも利用されます。

Itemaの現行レピア織機でも、衣料、ホームテキスタイル、ウール、シルク、テクニカルテキスタイルなど幅広い織物への対応が示されています。

一方、「レピア=中速」と固定的に覚える必要はありません。

機種や織物条件によって実際の速度は大きく異なります。

エアジェット織機

エアジェット織機は、圧縮空気を使って緯糸を経糸の開口部へ搬送する織機です。

トヨタ自動織機や津田駒工業も現在エアジェット織機を製造しています。

シャトルのような比較的大きな部品を織幅方向へ往復させず、空気を利用して緯糸を搬送できるため、高速化しやすい方式です。

エアジェットはどうやって緯糸を飛ばすのか

エアジェット織機では、メインノズルから噴射した空気で緯糸を送り出し、織幅方向に配置された補助ノズルなどによって緯糸を搬送します。

単純に「空気を一度吹いて反対側まで飛ばす」というだけではありません。

空気流を制御しながら、設定されたタイミングで緯糸を安定して挿入することが重要です。

エアジェットに向いている糸

ニッセンケンでは、エアジェットルームについて、空気抵抗を受けやすい紡績糸に適していると説明しています。

ただし、実際には合成繊維フィラメントを含め多様な糸が製織されています。

使用できるかどうかは、糸の太さ、毛羽、撚り、表面状態、織幅、機械条件などで変わります。

エアジェットはなぜ高速なのか

エアジェット方式では、シャトルのような大きな質量を持つ部品を織幅方向へ往復させる必要がありません。

このため高速製織に適しており、現代の汎用織物の量産に広く使われています。

実際に津田駒工業は、エアジェット織機の高速性能と緯入れ技術を現行機の主要技術として挙げています。

ただし、製織速度は糸、生地設計、織幅、組織などによって変わるため、「常に○○rpm」と一律の数値で比較するのは避けた方がいいです。

ウォータージェット織機

ウォータージェット織機は、水流によって緯糸を搬送する織機です。

トヨタ自動織機や津田駒工業もウォータージェット織機を製造しています。

水による搬送を利用するため、ポリエステルやナイロンなど、水との相性を考慮しやすい合成繊維フィラメントの製織で利用されています。

「撥水糸しか使えない」ではない

旧記事では「条件:撥水糸のみ」としていましたが、この表現は強すぎます。

ニッセンケンではウォータージェットルームを「水に濡れにくい合成繊維に適している」としています。

つまり重要なのは、単純に「撥水加工された糸かどうか」ではなく、使用する繊維の吸水性や水との相性、乾燥工程、製品品質などです。

ウォータージェットの用途

代表的には、ポリエステルやナイロンなどのフィラメント織物に利用されます。

タフタ、裏地、スポーツ・衣料用の合繊織物などで使用されるほか、津田駒工業の現行設備では、非常に細いポリアミドから太いポリエステルまで幅広いテクニカルテキスタイルへの対応も示されています。

そのため、ウォータージェット=薄地衣料専用でもありません。

プロジェクタイル織機

プロジェクタイル織機は、小型の投射体が緯糸の先端をつかみ、開口部を横切って緯糸を挿入する方式です。

広幅織物やテクニカルテキスタイルなどで利用されてきました。

現在もItemaでは「Projectile」を独立した織機カテゴリーとして扱っています。

旧記事では「グリッパー織機」という名称で厚物用として説明していましたが、ここはプロジェクタイル方式として整理した方が分類が明確です。

なお、レピアも緯糸を把持する機構を持つため、「グリッパー」という言葉だけでは方式が分かりにくくなります。

ジャカード織機とドビー織機は別の分類軸

ここで混乱しやすいのが、「ジャカード織機」「ドビー織機」という言葉です。

シャトル、レピア、エアジェット、ウォータージェットなどは、主として緯糸をどう挿入するかという分類です。

一方、ドビーやジャカードは、主として経糸をどのように開口させるかに関係します。

名称 主に関係する部分
エアジェット 緯入れ
ウォータージェット 緯入れ
レピア 緯入れ
ドビー 開口・経糸制御
ジャカード 開口・経糸制御

Stäubliでも、ドビーやジャカード装置はエアジェット、ウォータージェット、レピアなどの織機と組み合わせる開口装置として提供されています。

したがって、

エアジェットかジャカードか

という二者択一ではありません。

エアジェット織機+ジャカード開口装置

という組み合わせも存在します。

ドビーとは

ドビーは、綜絖枠を制御して経糸をグループ単位で上下させる開口装置です。

平織などの基本組織だけでなく、比較的複雑な組織を作ることができます。

Stäubliでは、エアジェット、ウォータージェット、レピア、プロジェクタイルなど複数の織機に対応するドビー装置を展開しています。

ジャカードとは

ジャカードは、多数の経糸を細かく個別制御できるため、複雑な柄や大きな柄を表現するために利用されます。

現在は電子制御されたジャカード装置も広く使われています。

Stäubliの現行ジャカード装置も、レピアやエアジェットなどの織機と組み合わせて使用されます。

どの織機が一番優れているのか

一つに決めることはできません。

織機を選ぶときには、

  • 糸の素材
  • 紡績糸かフィラメント糸か
  • 糸の太さ
  • 織幅
  • 織組織
  • 緯糸の色数
  • 必要な生産速度
  • 織物の目付・厚み
  • 必要品質
  • エネルギーや水の使用条件

などが関係します。

例えば高速量産を重視する織物と、特殊な太糸を使った産業資材では、適した設備が異なります。

織機を見るときは「何で緯糸を運ぶか」を確認する

繊維業界に入ったばかりで織機の名称が多くて分かりにくい場合は、まず緯入れ方式を見ると整理しやすくなります。

方式 何で緯糸を運ぶか
シャトル シャトル
レピア レピア
エアジェット 空気
ウォータージェット
プロジェクタイル 小型投射体

そのうえで、ドビーやジャカードなどの開口装置、経糸・緯糸、織組織まで見ると、織物の作り方を理解しやすくなります。

実務で織物を見るときに確認したい項目

確認項目 見る内容
織機 エアジェット、レピア、ウォータージェットなど
開口方式 カム、ドビー、ジャカードなど
経糸 素材、太さ、密度など
緯糸 素材、太さ、色数など
組織 平織、綾織、朱子織、その他組織
織幅 必要な製品幅を満たすか
目付・厚み 完成した生地の規格
後加工 染色、樹脂、撥水、ラミネートなど

同じ素材・同じ組織でも、使用設備や製造条件が違えば、外観や品質に差が出ることがあります。

まとめ

織機は、経糸と緯糸を交差させて織物を作る機械です。

基本的な製織動作には、開口、緯入れ、筬打ちがあります。

主要な織機は、緯糸をどのように挿入するかによって、シャトル、レピア、エアジェット、ウォータージェット、プロジェクタイルなどに分けて考えることができます。

エアジェットは空気、ウォータージェットは水、レピアは機械的な把持機構を使って緯糸を運びます。

一方、ドビーやジャカードは、緯入れ方式ではなく経糸の開口を制御する設備です。

そのため織機を見るときは、

緯入れ方式 → 開口方式 → 使用する糸 → 織組織 → 生地規格

という順番で整理すると分かりやすくなります。

どの織機が一番優れているというものではなく、作りたい織物に合わせて設備を選ぶことが重要です。

参考資料

※織機の適性、生産速度、対応糸種、織幅、品質などは、織機方式だけで決まるものではありません。機種、糸、織物設計、開口装置、製造条件などによって異なります。

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