スパンボンドの素材と目付の違い|PP・PET・ナイロンを実務目線で比較

スパンボンド

スパンボンド不織布は、同じ製法でも使用する素材や目付によって性質が大きく変わります。

例えば、PP(ポリプロピレン)のスパンボンドとPET(ポリエステル)のスパンボンドでは、同じ30g/㎡でも同じ用途に使えるとは限りません。

また、目付が30g/㎡から60g/㎡へ増えたからといって、厚みや強度が単純に2倍になるわけでもありません。

スパンボンドを選ぶときは、

素材 → 目付 → 繊維径 → ウェブ構造 → 結合条件 → 後加工 → 用途

まで合わせて見る必要があります。

この記事では、PP・PET・ナイロンなど代表的なスパンボンド素材の違いと、目付が製品に与える影響を整理します。

まず「素材」と「目付」は別の情報

スパンボンドの仕様書を見ると、一般的に素材と目付が記載されています。

例えば、

PP 30g/㎡

PET 50g/㎡

といった表記です。

ここで、

  • PP・PETなど → 何の樹脂から作られているか
  • 30g/㎡・50g/㎡など → 1㎡あたり何gあるか

を表しています。

この2つは別の情報です。

同じ目付でも素材が違えば性質は変わりますし、同じ素材でも目付や繊維径、結合条件が違えば別の製品になります。

スパンボンドに使われる素材

スパンボンドには複数のポリマーが使用されています。

実際に旭化成アドバンスの「ELTAS™」では、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレンのスパンボンドが製品化されています。

また、PLAを使用したバイオベースのスパンボンドも展開されています。

素材 略称 見るべき特徴 用途例
ポリプロピレン PP 低密度、疎水性、熱接着性など 衛生、農業、包装、生活資材など
ポリエステル PET 耐熱性、寸法安定性、強度など 建築、土木、フィルター、産業資材など
ナイロン PA / Ny 柔軟性、耐摩耗性、吸湿性など 工業資材、特殊用途など
PLA PLA 原料由来、分解条件、耐熱性など 生活資材、農業用途など

この表は一般的な傾向です。

実際の性能は、使用する樹脂グレード、添加剤、繊維径、目付、結合条件、後加工などによって変わります。

PPスパンボンド

PPは、スパンボンドで広く使われている代表的な素材です。

旭化成はPPスパンボンドを衛生材料などへ展開しており、海外でも大規模なPPスパンボンド設備を稼働させてきました。

PPを見るときのポイントは、主に、

  • 密度が比較的小さい
  • 水を吸収しにくい
  • 熱接着に利用しやすい
  • 薬品に対して安定な用途が多い

といった点です。

特に衛生材料では、薄い不織布を大量生産しやすいスパンボンドの特徴と組み合わせて広く利用されています。

PPは水を吸わないのか

PPそのものは疎水性の高い樹脂です。

しかし、PPスパンボンド製品が必ず水をはじくとは限りません。

親水剤などを使用すれば、表面に水を広がらせたり通過させたりする製品も作ることができます。

そのため、

PP=撥水製品

と判断するのではなく、後加工も確認する必要があります。

PETスパンボンド

PETも代表的なスパンボンド素材です。

ユニチカは1975年にスパンボンド設備を稼働させ、その後PETスパンボンドを長年展開してきました。現在まで建築、土木、インテリアなどの産業用途でPETスパンボンドが利用されてきた実績があります。

PETを見るときは、

  • 耐熱性
  • 寸法安定性
  • 機械的性質
  • 産業用途への適性

などがポイントになります。

ただし、「PETだからPPより必ず強い」「PETだから必ず耐候性が高い」と一律に判断することはできません。

目付、繊維径、結合状態、添加剤、後加工まで含めて比較する必要があります。

ナイロンスパンボンド

ナイロンを使用したスパンボンドも存在します。

旭化成アドバンスのELTAS™では、PP・PETだけでなくナイロン製のスパンボンドも展開されています。

ナイロンは、一般に、

  • 柔軟性
  • 耐摩耗性
  • 靭性

などを活かした用途で検討されます。

一方でナイロンは吸湿性を持つため、使用環境によっては水分による寸法・物性変化も考慮する必要があります。

PPやPETほど日常的に見かけるスパンボンドではありませんが、特殊用途では重要な選択肢です。

PEスパンボンドは少し注意が必要

現行記事では「PEスパンボンド」をPP・PET・ナイロンと同列に扱っていましたが、ここは少し注意が必要です。

ポリエチレンは低融点成分として複合繊維に利用されることも多く、例えばPP/PEやPET/PEなどの芯鞘型複合繊維として熱接着性を付与する設計があります。

そのため、仕様書で「PE」と書かれていても、

  • PE単独なのか
  • PP/PE複合なのか
  • PET/PE複合なのか
  • 表層だけPEなのか

を確認する必要があります。

「PEだから柔らかい」と素材名だけで判断しない方が安全です。

PLAなどのスパンボンドもある

スパンボンドはPP・PET・ナイロンだけではありません。

旭化成アドバンスでは、PLAを使用したバイオベースのスパンボンド「ECORISE™」も展開されています。

PLAなどの材料を検討するときは、単に「植物由来」「生分解性」と見るのではなく、

  • どの環境で分解するのか
  • 耐熱性
  • 保管条件
  • 使用期間
  • 必要な認証

などまで確認することが重要です。

素材が違えば製造条件も変わる

PP、PET、ナイロンなどでは、ポリマーの融点や粘度、紡糸特性などが異なります。

そのため、同じスパンボンド設備であれば何の素材でも簡単に生産できる、というわけではありません。

実際には、

  • 押出条件
  • 紡糸温度
  • 冷却条件
  • 延伸条件
  • 結合温度
  • 設備材質や構成

などを素材に合わせて設計する必要があります。

ただし、「素材ごとに必ず完全に別の機械が必要」という意味ではありません。

複数素材に対応できる設備もあるため、メーカーの設備仕様によって異なります。

現行記事の「基本的には素材別でマシーンが違う」という表現は、このように修正した方が正確です。

目付とは

目付は、不織布1㎡あたりの質量を表す値です。

一般的に単位は、

g/㎡

で表します。

例えば、30g/㎡の不織布であれば、1㎡あたりの質量が30gという意味です。

目付は、不織布を比較するときに非常に重要な基本規格です。

目付が増えると何が変わるのか

同じ素材・同じ製法・同じ設計条件で比較するなら、目付が増えることで単位面積あたりに存在する繊維量も増えます。

そのため一般的には、

  • 遮蔽性
  • 引張荷重
  • 厚み
  • 剛性

などが変化する可能性があります。

ただし、重要なのは、目付だけでこれらの性能を決めることはできないということです。

例えば同じ50g/㎡でも、細い繊維を高密度に配置した製品と、太い繊維を比較的粗く配置した製品では、見た目や物性が異なります。

目付が2倍なら強度も2倍なのか

必ずしも2倍にはなりません。

引張強さには、

  • 目付
  • 素材
  • 繊維径
  • 繊維配向
  • MD/CD
  • エンボス面積
  • 結合条件

などが関係します。

例えば目付を増やしても、結合状態が変われば強度の増加率も変わります。

したがって、製品選定では目付から強度を推測するのではなく、メーカーの引張試験値を確認する方が確実です。

目付が2倍なら厚みも2倍なのか

これも単純には比例しません。

厚みには、

  • 繊維径
  • ウェブの嵩
  • エンボス条件
  • 圧縮状態
  • 測定時の圧力

などが関係します。

同じ目付でも結合条件が強く、シートが高密度になれば薄くなることがあります。

逆に、同じ目付でも嵩を持たせた構造であれば厚くできます。

同じ目付でも厚みが大きく違う実例

目付と厚みが別の情報であることは、スパンボンドと他の不織布を比較すると分かりやすくなります。

このサイトで使用しているPET100%の実物では、次のような違いがあります。

製法 素材 目付 厚み
スパンボンド PET100% 120g/㎡ 約0.3mm
ニードルパンチ PET100% 120g/㎡ 約3mm

素材も目付も同じですが、厚みは約10倍違います。

これは繊維の状態、ウェブ構造、結合方法、密度などが異なるためです。

「120g/㎡だから、このくらいの厚み」と目付だけから判断できないことが分かります。

同じスパンボンドでも目付だけでは比較できない

さらに重要なのは、スパンボンド同士でも目付だけでは比較できないことです。

例えば、

PP 30g/㎡ A品

PP 30g/㎡ B品

があったとしても、同じ製品とは限りません。

違いが出る可能性がある項目として、

  • 繊維径
  • エンボスパターン
  • エンボス面積率
  • MD/CD物性
  • 厚み
  • 通気度
  • 親水・撥水加工
  • 添加剤

などがあります。

目付は重要ですが、製品仕様の一項目にすぎません。

エンボスが厚みや風合いに影響する

熱エンボスで結合するスパンボンドでは、エンボス条件も製品の性質に影響します。

エンボス部は繊維同士が強く結合しているため、

  • 接着面積
  • パターン
  • 温度
  • 圧力
  • ライン速度

などによって、強度や厚み、柔軟性、表面状態が変わります。

そのため、同じ素材・同じ目付でもメーカーや品番が変われば、手触りが大きく違うことがあります。

目付の「一般的な範囲」は決めつけない

現行記事では「スパンボンドの目付は大体15〜130g/㎡」としていました。

しかし、スパンボンド全体をこの範囲で定義するのは適切ではありません。

メーカー、設備、素材、用途によって製造可能な目付範囲は異なります。

旭化成アドバンスのELTAS™でも、PP・PET・ナイロンで低目付・薄物グレードを含む複数の製品が展開されています。

一方、産業用途では高目付のスパンボンドも存在します。

したがって、必要な目付が製造可能かどうかは各メーカー・各品番で確認する必要があります。

素材×目付で用途を決められるのか

素材と目付からある程度用途を想像することはできますが、それだけで決めることはできません。

例えば同じPP30g/㎡でも、

  • 親水処理品
  • 撥水品
  • UV対策品
  • 帯電処理品
  • ラミネート基材

では用途が変わります。

PETでも同様です。

最終的には、必要な性能を先に決めてから規格を選ぶ必要があります。

実務でスパンボンドを比較するときの順番

実際に複数のスパンボンドを比較するときは、次の順番で見ると整理しやすくなります。

順番 確認項目 理由
1 素材 PP・PET・ナイロンなど基本特性を確認する
2 目付 単位面積あたりの繊維量を確認する
3 厚み 嵩・密度の違いを見る
4 繊維径 表面性や空隙構造を見る
5 MD/CD物性 方向別の強度・伸びを確認する
6 通気・透水など 用途に必要な機能を見る
7 後加工 親水、撥水、UV、ラミネートなどを確認する

特に、同じ素材・同じ目付だから同等品という判断は避けた方がいいです。

メーカーごとに得意素材が違う理由

スパンボンドメーカーには、それぞれ得意な素材や製品領域があります。

旭化成アドバンスのELTAS™ではPP・PET・ナイロンを展開しており、ユニチカはPETスパンボンドを長年生産してきました。

この違いには、

  • 保有する紡糸設備
  • 結合設備
  • 原料技術
  • 生産速度
  • 製品幅
  • 得意用途

などが関係します。

そのため、実務では「どのメーカーが一番優れているか」ではなく、必要な素材・目付・物性を得意とするメーカーを探すことが重要です。

まとめ

スパンボンドは、素材と目付だけでも多くの種類があります。

代表的な素材にはPP、PET、ナイロンなどがあり、それぞれ樹脂としての特性や加工条件が異なります。

一方、目付は1㎡あたりの質量を表す値であり、厚み・強度・通気性そのものを表しているわけではありません。

同じ素材・同じ目付でも、繊維径、ウェブ構造、エンボス、MD/CD、後加工などが変われば別の製品になります。

そのため、スパンボンドを比較するときは、

素材 → 目付 → 厚み → 繊維径 → MD/CD → 結合状態 → 後加工 → 用途

という順番で見ると分かりやすくなります。

「PP30g/㎡」「PET50g/㎡」という情報は製品を理解する入口であって、それだけで性能を判断しないことが重要です。

参考資料

※スパンボンドの強度、伸び、厚み、通気性、耐熱性、耐候性、価格などは、素材名や目付だけでは決まりません。原料グレード、繊維径、繊維配向、結合条件、厚み、後加工、製品設計などによって異なります。

コメント