ニードルパンチ不織布とは?製法・特徴・厚み・素材を実物写真で解説

不織布

ニードルパンチ不織布は、繊維をシート状に並べたウェブへ多数の針を繰り返し突き刺し、繊維同士を絡ませて作る不織布です。

見た目がフェルトに似ている製品もありますが、実際には厚みのあるクッション材から薄手の工業資材まで幅広く作ることができます。

ただし、「ニードルパンチだから厚い」「ニードルパンチだから柔らかい」と単純には決まりません。

使用する繊維、目付、厚み、ウェブの作り方、針の条件、後加工などによって完成した不織布の性質は変わります。

この記事では、ニードルパンチ不織布の基本的な製法から、実物のPET不織布を使った比較、素材や後加工を見るときのポイントまで整理します。

ニードルパンチ不織布とは

ニードルパンチは、不織布を作る方法の一つです。

基本的には、短繊維などから作ったウェブへ、バーブと呼ばれる突起を持つ針を繰り返し上下させます。

針が通過するときに繊維の一部を厚み方向へ移動させ、繊維同士を絡ませることでシートとして一体化させます。

つまり、ニードルパンチという言葉は素材名ではなく、繊維を機械的に絡ませる方法を表しています。

PETを使うこともあれば、PPやナイロンなど別の繊維を使うこともあります。

ニードルパンチができるまで

短繊維を使う一般的なニードルパンチでは、大きく次のような流れで不織布を作ります。

工程 行うこと
① 原料繊維 使用する短繊維を準備する
② 開繊・混綿 繊維をほぐし、必要に応じて複数繊維を混合する
③ ウェブ形成 繊維をシート状に並べる
④ ニードリング 針を繰り返し通して繊維を絡ませる
⑤ 仕上げ 必要に応じて熱処理、樹脂加工、カレンダーなどを行う

実際の設備や工程は製品によって異なります。

重要なのは、ニードリングだけで製品性能が決まるわけではないことです。

ニードルパンチの特徴

ニードルパンチは、繊維を立体的に絡ませることができるため、さまざまな構造の不織布を作れます。

一般的には、次のような特徴を持つ製品を設計できます。

特徴 考え方
厚み・嵩高さ ウェブ構造やニードリング条件によって厚みを持たせた製品を作れる
通気・透水 空隙を残した構造を作ることができる
クッション性 嵩高な構造を利用できる
素材選択 用途に応じてさまざまな繊維を使用できる
後加工 熱処理、樹脂加工、ラミネートなどを追加できる

ただし、これらはニードルパンチなら自動的に得られる性能ではありません。

例えば通気性が必要なら、目付や厚み、繊維径、樹脂加工の有無なども関係します。

実物で見るニードルパンチ不織布

実際のニードルパンチ不織布を見てみます。

今回使用するのは、PET100%・目付120g/㎡・厚み約3mmのニードルパンチ不織布です。

PET100%・120g/㎡・厚み約3mmのニードルパンチ不織布。

写真では白いシートに見えますが、実物を触ると繊維の存在を感じやすく、厚みがあります。

同じPET100%でも、製法が変わると見た目や厚みは大きく変わります。

同じPET100%・120g/㎡のスパンボンドと比較する

比較のため、同じPET100%・120g/㎡のスパンボンド不織布を見てみます。

PET100%・120g/㎡・厚み約0.3mmのスパンボンド不織布。

項目 ニードルパンチ スパンボンド
素材 PET100% PET100%
目付 120g/㎡ 120g/㎡
今回の厚み 約3mm 約0.3mm
今回の繊維状態 短繊維 長繊維
主なシート形成 ウェブを針で絡合 紡糸した長繊維から直接ウェブ形成

どちらもPET100%で、目付も120g/㎡です。

それでも今回の実物では、厚みが約3mmと約0.3mmで大きく違います。

つまり、素材と目付が同じでも、製法や繊維構造が変われば別の不織布になるということです。

ただし、この比較から「ニードルパンチは必ずスパンボンドの10倍厚い」と考えてはいけません。

これは今回使用した2製品の比較です。

ニードルパンチの厚みはどのくらいか

ニードルパンチ不織布は、薄手から厚手までさまざまな製品があります。

そのため、「ニードルパンチは○mmから○mm」と一律の範囲で覚えない方がいいです。

厚みは、

  • 目付
  • 繊維の太さ
  • 繊維長
  • ウェブ構造
  • ニードリング条件
  • 圧縮・カレンダー
  • 熱処理
  • 樹脂加工

などによって変わります。

実際の研究でも、ポリエステル系不織布について、ニードルパンチ製品やスパンボンド製品に異なる厚み・質量の組み合わせが使われています。

厚みを見るときは、目付や構造と一緒に確認します。

目付が同じでも厚みが同じとは限らない

目付は、1㎡あたりの質量です。

例えば今回のニードルパンチとスパンボンドは、どちらも120g/㎡です。

同じ面積の中に存在する質量は同じでも、繊維が嵩高く配置されているのか、薄く密に配置されているのかで厚みは変わります。

そのため、

目付=厚み

ではありません。

ニードルパンチを選ぶときは、目付と厚みを別の規格として確認します。

どんな素材が使われるのか

ニードルパンチにはさまざまな繊維を使用できます。

不織布全般では、ポリエステル、ポリプロピレン、ナイロン、レーヨン、ガラス繊維など多様な原料が使用されています。

素材例 検討される性質の例
PET 強度、寸法安定性、耐久性など
PP 軽量性、耐薬品性など
ナイロン 耐摩耗性、靭性など
レーヨン 吸液性など
ガラス繊維など 耐熱性、無機繊維特有の性能

ただし、「この素材を混ぜれば必ずこの性能になる」とは限りません。

繊維の太さや長さ、混率、ニードリング、後加工なども同時に関係します。

PET100%だけでも多くの設計がある

現在の記事では「PET+PP」「PET+低融点PET」「PET+レーヨン」などの配合例を中心に説明していました。

もちろん複数の繊維を組み合わせる製品もあります。

ただし、PET100%だから単純な製品というわけでもありません。

同じPETでも、

  • 繊度
  • 繊維長
  • 捲縮
  • 断面形状
  • ウェブ構造
  • 目付
  • 厚み
  • ニードリング条件

などを変えることができます。

まずは「素材名」だけでは不織布の仕様は決まらない、と考える方が分かりやすいです。

低融点繊維を併用する場合

ニードルパンチで形を作ったあと、熱によって繊維同士をさらに固定する設計もあります。

その方法の一つが、低融点成分を持つ繊維を使用することです。

加熱すると一部が軟化・融着し、繊維同士の接着点を作ることができます。

これによって形状安定性や剛性などを調整できる場合があります。

ただし、配合率を「10〜30%が一般的」などと一律に決めることはできません。

必要性能、使用する繊維、加熱条件などによって設計は変わります。

樹脂加工を追加する場合

ニードルパンチ後に樹脂を付与する製品もあります。

例えば、繊維の固定、硬さの調整、表面状態の変更などを目的に樹脂加工を行うことがあります。

ただし、樹脂量や加工方法によって、

  • 硬さ
  • 重量
  • 通気性
  • 透水性
  • 表面状態

なども変化する可能性があります。

そのため、「ニードルパンチ+樹脂」を一つの固定仕様として考えるのではなく、加工後の製品性能で確認します。

カレンダー加工や熱処理でも変わる

ニードルパンチ後に熱や圧力を加えると、厚みや表面状態を変えることができます。

例えば圧縮すれば、嵩高だった不織布を薄くすることができます。

一方で、厚みが減ることで空隙構造や風合いなども変わります。

同じ原綿、同じ目付でも、後工程が違えば最終製品は同じではありません。

ニードルパンチでもMD・CDを見る

短繊維を使ったニードルパンチでも、ウェブ形成時の繊維配向によってMDとCDで物性差が生じることがあります。

ニードリングによって繊維が厚み方向にも移動しますが、元のウェブが持っている方向性が必ず完全になくなるわけではありません。

そのため、強度が重要な用途ではMD・CD方向の引張物性も確認します。

MD・CDについては別記事で、PPスパンボンドを実際に引っ張った比較を掲載しています。

ニードルパンチはどこで使われるのか

ニードルパンチ不織布は、さまざまな分野で使用されています。

例えば、

  • 自動車内装・吸音材
  • カーペット・床材
  • フィルター
  • 土木・建築資材
  • 保護材
  • クッション・緩衝材
  • 研磨材の基材

などです。

実際にユニチカでは、ポリエステル長繊維をニードルパンチした不織布シートを処分場の遮光性保護マット用途として紹介しています。

ここからも分かるように、ニードルパンチは短繊維だけに限定された技術ではありません。

「ニードルパンチ=短繊維」と絶対的に覚えるのではなく、針によって繊維を絡ませる製法として理解する方が正確です。

ニードルパンチを見るときに確認したい項目

確認項目 見ること
素材 PET、PP、ナイロンなど
目付 g/㎡
厚み 測定条件も含めて確認
繊維 太さ、長さ、構成など
ウェブ 配向、積層方法など
ニードリング 絡合状態、表面状態など
MD・CD 方向別の物性
後加工 樹脂、熱処理、カレンダー、ラミネートなど
用途 何の性能を必要としているか

「ニードルパンチだから○○」と決めない

ニードルパンチを理解するときに一番大切なのは、製法名だけから性能を決めないことです。

例えば、

「ニードルパンチだから厚い」

「ニードルパンチだから水を通す」

「ニードルパンチだから柔らかい」

という言い方では、実際の製品を十分に説明できません。

同じニードルパンチでも、目付、厚み、繊維、圧縮、樹脂加工などによって性質は変わります。

製法は、その製品を理解するための一つの情報です。

まとめ

ニードルパンチ不織布は、針を使って繊維を機械的に絡ませる不織布です。

厚みのある製品や嵩高な製品を作ることができますが、それだけがニードルパンチの特徴ではありません。

使用する繊維、ウェブ構造、ニードリング条件、後加工によって、さまざまな製品を設計できます。

今回の実物では、PET100%・120g/㎡のニードルパンチが約3mm、同じPET100%・120g/㎡のスパンボンドが約0.3mmでした。

この比較からも、素材と目付だけでは不織布の性質を判断できないことが分かります。

ニードルパンチを見るときは、素材、目付、厚みだけでなく、繊維、ウェブ、MD・CD、後加工、最終用途まで合わせて確認することが重要です。

参考資料

※ニードルパンチ不織布の厚み、目付、繊維構成、樹脂量、物性などは製品設計・製造条件によって異なります。本記事では一律の厚み範囲や配合率を規格値として示していません。実際の製品選定では各製品の仕様書・試験値をご確認ください。

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